第3話 始まり 3

 寝すぎたせいか目が冴えて朝まで起きていた。

 それで布団に潜ったまま微妙に振動していた正体を見た。小柄な全身痣だらけの30歳前後に見える女だ。ここでは女男お構いなしに診察が始まる。後の二人はまだ眠っているようだ。

 浴衣を脱がされた女は全裸になって背中を向けている。白衣の背中が私の目の前に来て茶色の薬を塗り始める。

「傷口に熱を持っている。膿むと厄介だ。これで何回になる?」

「5度目です」

「いい加減にあの男と別れたら。このままでは体が持たんぞ」

「撮影が始まるともう気が行ってしまうのです」

「だが男は撮影が終わるとまた遊び回るのだろ?あの男にはそんな女が何人もいるらしいな。隣の兄ちゃんがあんたの写っている写真集を持ってきた」

 女は前に向き直って針の跡と充血した乳房を見せる。やぶ医者は慣れたように女をひっくり返すと尻の穴を覗きこみ治療を始める。

「相当ぶっ太いものを入れたな。完全に脱肛になっている」

 いつの間にか少女が階段を上がってきて、女の姿に全く無関心に私のベットの横に丸椅子を運んで来て座る。

「この街では背広は似合わない。古着だけと合いそうなのがあったので買ってきた。やぶ医者が気が付いたと知らせてきた。出て行けと言うことよ。もう歩けるのか?」

 背中に目があるようにやぶ医者が答える。

「記憶はないが歩けるさ」

「じゃあ今から出ていく」

「支払いは?」

「ツケで私が払う。歩けたらすぐに出ないと悪い病気をうつされるからな」

 どうも私は少女のテンポについていけない。







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