猫人
我輩は猫人である。名は、生まれたときからない。
なぜなら我輩は猫人で、名前などというものは必要ないからである。
人は遠い昔に滅び去った。長く続く氷河期が、人を絶滅へと追い込んだのだ。脆く華奢な人間たちは氷河期を生き延びることができなかった。
だがしかし、彼らは文明の力をもって人生きた痕跡を残したのだ。我ら猫人は、そんな人間の悪あがきの産物と言えよう。
我らは人間たちによって造られた知的生命体なのだ。
我らが祖先であるイエネコもまた、下僕たる人間を失い絶滅へと追いやられた種族だ。世界四大文明が1つ、古代エジプトの時代からイエネコたちは神として崇められ、人はその下僕として生きてきた。
我輩が住まうこのジパングでは、仏さまの経典を守る有難いみ使いとしてイエネコたちは唐から海を越えてやってきた。イエネコは貴族の1匹にも数えられ、下賤のものとは比べ物にならない扱いを受けたいたのだ。
時代が下がるにつれイエネコたちは数を増やし、ジパング全土へとその勢力を拡大していった。
猫の毛並みで天候が分かる。猫の目をみれば瞳孔の開き具合で時間も分かる。
そんな猫のたちの特性を利用して、人間たちは遠い船出のお供にも猫たちを連れていった。離島にも猫たちの居場所ができ、船の安全を司る存在として大切にされてきたのだ。
メイジになり近代文明がジパングに入り込むと、猫たちは繭を鼠から守る存在としてそれはそれは大切にされた。
野良になり不埒な人間どもによって虐待される猫たちを守るため、人間たちは法律を整備し、動物愛護法なる猫を称える法すらつくったのだ。
人が猫に抱く信仰心はこれにとどまらない。彼らはイエネコを絶滅から救うために我ら猫人を生み出した。
我輩たち猫人の中には、神たるイエネコの遺伝子が眠っているのだ。
そうして、彼ら人間はイエネコの偉大さを後世に伝えるために、メシアたる我々にある使命を託した。
イエネコの偉大なる歴史を編纂し、収集し、語り継ぐという使命を。
我輩こと、ジャパニーズボブテイル種222号もその使命のために炬燵コロニートミオカに生を受けた猫人だ。我ら猫人の存在理由はただ1つ。
我らの先祖たるイエネコの功績を後世に伝えることである。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます