第3話 スペースワールドは不滅ばい

 黒崎くろさきから私たちはもうかなり歩いた。キツイよ〜!


 でも、私は自分の知っている世界に必ず戻るんだ。


 そんな私の超切実な想いとは裏腹に、周囲の景色が再び非現実的な物へと移り変わっていった。


 辺り一面に転がっているかのように置かれた岩のオブジェ。


 何かの動物をモチーフにしているのかな?歪な形をしているものばかりだった。


れんくん…あの変なオブジェみたいなの何?」


 私は尋ねる。


「ああ、それはスペースワールド遺跡に近づいたっち証拠っちゃね。」


 スペースワールド?聞いたことがある。北九州最大のテーマパークだった。でも、最近閉園したんだよね。それもチラッとテレビで見たことがある。


 でも、ちょっと待って!遺跡ってどういう事なの!?えっ!スペースワールド跡地じゃなくて遺跡!?


「北九州は昔から宇宙人との交流が盛んなんちゃね。北九州の聖人式は宇宙人への感謝をするための儀式やけん。」


 宇宙人?なんか話のスケールデカくなってますけどー!!じゃあ私、誰かに捕まったら宇宙人に捧げられるわけ!?成人式怖すぎでしょ!


「北九州は、宇宙人から、資金となる物を貰って、なんとかやっといけとるんやけ、宇宙人との交流は絶対なんちゃ。」


 え、北九州って言ったら、ヤ◯ザの方達が資金やら何やらしていらイメージあったけど宇宙人が活躍されてたのね。


 私は、初めて知る北九州の事実に驚愕の繰り返しだった。


 そんな時。


「ひゃっほ〜〜〜〜!!そこのお兄さんちゃん達、誰の許可でこの道通っとんやか!?」


 ヤバイ、またモヒカンの賊に辺りを囲まれた!5、6人いる!


れんくん、どうしよ!?」


 私は怖くて、れんくんの腕にぎゅっと捕まる。


「アニキィ〜〜!こいつらどうしようか〜〜!?」


 私の背後でモヒカンBがアニキに尋ねてる!


「よぉ〜〜し、金目の物を置いていけ〜〜!」


 アニキの目当てはお金か!


 大事なお金も命には代えられない!いつもならすんなり渡したいところだけど、私、パジャマだし、お金どころか金目の物もないよ!


「ご…ご…ごめんなさい!い…命だけは助けてください!」


 蓮くんの後ろで命乞いをする私。するとモヒカンCが…


「アニキィ〜〜!!こいつ、標準語ばい!?」


 し…しまった!!北九州の人間じゃないのがバレる!!


「まさか、お嬢ちゃ〜〜ん!?聖人式で召喚されて来と〜人間やないか〜〜!?」


 アニキに悟られてしまった。


「アニキ〜〜!!こいつら捕まえるばい!!生贄を捕まえたら俺たち組のもんは、一躍ヒーローになるけん!!ひゃっほ〜〜〜〜!!」


「よ〜〜し、お前ら!!不発弾を掘り起こせ〜〜!!」


「へぇい!!!!」


 モヒカン達が一斉に雄叫びをあげる。


 ヤバイ!!モヒカン達が一斉に辺りを手で掘り出した。


「アニキ〜〜!!この辺、不発弾埋まってないばい!!」


「そんなことないばい!!探せぇ〜〜!!」


 てか、捕まえるのに不発弾掘り当てるってどういうこと!!そもそも、そんなどこにも埋まってるもんなの!?


あかり!今がチャンスばい!走ろう!」


 れんくんは、私の手を引き、オブジェが密集する方へ向かい、走り出した。


「アニキ〜〜!!不発弾ありましたぜ〜〜!!」


「よくやった〜〜!!」


 不発弾掘り起こされた!!私は走りながらモヒカン達の様子を伺う。


 あっ…


 なんとアニキが受け取った不発弾を地面に落としてしまった。凄まじい爆発が起こる。


「ぐわ〜〜〜〜!!」


 辺りに吹き飛ぶモヒカン達。何とか助かった…。私は力が抜けて、地面にフニャフニャとへたり込む。


「た…助かったよ…」


 安堵する私。


「でも、今の爆発で他の奴らが来るかもしれんけ!今夜はもう、スペースワールド遺跡に身を潜めるばい!」


 さっきまでお布団に寝て朝を迎えたはずなのに、辺りはもう夕暮れ時だった。オブジェと沈んで行く夕陽がマッチする。


「よいしょ!」


「……!」


 蓮くんはすっかり腰が抜けてしまった私をおんぶしてくれた。そんなに私と身長も変わらないのに、意外にたくましいんだな。重くないだろうか?


 私は、小さいけど温かい蓮くんの背中に身を委ねた。

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