【第5話】 Ten of Swords

 ─チッチッチッ



 時計の針が刻む音で目を開く。


 あれ、いつの間に寝ていたのだろうか。

 枕元の電子時計は11月19日 22:00をさしていた。


「また変な時間に目覚めちまったなぁ…」

 目を擦りながらテレビを付ける。



 ─今日は九時頃から雨が降り始めましたが…


 ピッ


 ─お前ら…立ち止まるんじゃねぇぞ…


 ピッ


 ─貴方しか私は愛せない…まって…


 ピッ


 ─世界5分前想像説というのは…


 ピッ


 ─さて、続いてはニュースです。



「この時間じゃまぁ、こんなもんか…」


 めぼしい番組が特に見つからず、結局チャンネルを1周回し、もとの全国放送に戻す。


 すると、アナウンサーは横から急遽紙を渡されたようだった。

 すると画面は切り替わりアナウンサーは口を開く。

 その映像に自分は自身の目を疑った。



 ─今入ってきた緊急速報ですが、これは一体なんなのでしょうか…。



 暗い外を移した画面の奥そこには地面を這う黒いいくつかのもやっとした影。

 安全を考慮してかガラスの手前側から撮影しているため少々反射してよくは見えないがそれらは並のように、そしてときおり細く縦に伸びたり横に広がったりを繰り返しており、とてもこの世のものとは思えない容姿をしていた。


「なんだ…これ…」


 思わず自身の顔をひっぱたたく。

 しかしヒリヒリするだけで何も起きない。

 即ちこの状況は実際にテレビの先で起きていることを示していた。



 なんなのでしょうかと不安を煽るアナウンサーの声。

 少しずつ音が大きくなるテレビ内から響くパトカーのサイレン。

 中継で忙しく動いているであろう社員さんの騒がしい雑音。


 この眠気を不安でかき消した状況にトドメを指すかのようにそれは現れた。

 影は縦に大きく伸び、やがて収縮し不気味なことに人の形へと近づいてゆく。


「なんてことでしょうか…人です、人の形へと変化しました…」


 嘘だろ画面の中でも動揺が広がる。

 画面の中の薄暗い闇の中。

 電灯に照らされて形がはっきりしたそれはまさしく自分の見知った人物へと変化した。

 いや、見知った人物なんてもんじゃあない。



「嘘って言ってくれよ…なんだこれ」



 そこに現れたのは


 …まさしく自分自身─明日原亮だった。



そしてその後、世界は暗転した。

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