【第4話】 日常,
─最終下校時間になりました。校舎内にいる生徒は速やかに下校してください。
「お先失礼しますぅ」
「あいよ~おつかれ!」
下校を促す放送が入り、机上のものを鞄にしまう。
そんな今日もいつも通りで何の変哲もなく終わりを迎えようとしていた。
─この時までは。
「ねぇ、あのさ」
「うん?」
「今日さ…帰りがけデートしない?」
…え、ええぇぇぇぇえ!?!?!!?
「な、なぁ、デートってお前言ったか?」
「うん」
「
「うん、
嘘だろおい…。。
どうしちまったんだ真白…。
「別に、ただ買い物に付き合って欲しいだけよ。言い回しなんてなんでもいいじゃない」
「ああ、なんだ、そういうことか…びっくりした…あはは」
いやいや、全くもってびっくりである。
これじゃあまるで…俺に…
「好意があるとか、思ってるんじゃないでしょうね?キモチワルイ」
ですよね~。。。
そんなこんなで帰り道。
普段は通り過ぎる公園の角を曲がり、ビルとビルの間を突き抜ける。
目的地は…大型ショッピングモール「Bion」である。
「それで…一体何を買いに来たんだ?」
「実は、いつも使ってるお気に入りのペンが壊れちゃってね…。新しいのを買いに来たのよ」
彼女のお気に入りのペン…それはこの大型ショッピングモール内にある文芸部屋限定の桜色の持ちやすいMr.クリップと呼ばれる種類のペンである。
自分もペンが壊れ、筆箱も新調しようと思っていた矢先に沢山の文房具を置くこの店に来ることになったのはちょうど良かった。
店に入りエスカレーターを登り、目的の文房具屋を目指す。
すると、目的地の手前側の本屋さんに見知った2人を見かけた。
「あれって瑠衣先輩と心先輩かなぁ?」
どうやら真白も気がついたようだ。
「瑠衣先輩~」
声をかけてみる。
「あ、あれ、亮くん?」
瑠衣先輩は何故だか1度困ったような顔をしてからこちらを向いた。
「先輩達も買い物ですか?」
「あぁ、ちょっと…興味のある本の最新刊が出てな…」
あ、絶対心先輩だしBLだ。
「ところで…亮くん達はどうしたの?」
「あ、えっと…真白がでー…ペンが壊れてしまったらしくてですね、ちょうど一緒に買いに来たわけです」
隣を見ると真白が鋭い眼光で睨みつけて来たためデートという単語は自粛しておく。
「そ、それじゃお邪魔かな…、じゃあね」
「あ、ええ、それじゃ…」
何やら要らぬ気遣いをさせてしまったようである…。
申し訳ない…。
そんなこんなで着いた緑色に黄色線が入っている文房具屋。
「ところで…真白は今度はどんなペンにするんだ?」
「んー、とりあえず私のことはいいの、亮は自分のペンを探しなさいっ」
「お、おう?」
全く彼女の考えがわからない。
しかしまぁ、どっちにしろ新調しなくてはならない。
素直に新しいペンをさがすためにペンがズラっと並んでいる売り場へと向かう。
赤…青…黒…
見た目や値段、触り心地などピンからキリまで多種多様に並ぶそれらは見るものを惑わせる。
悩むな…一体何にしよう。。
そんな時目に止まった青いメタリックのシャーペン。しかも4色のボールペン付。
これしかない。
ということで、値段を見る。
そこには
よし、良さそうである。
「ん、亮決まったの?」
「おう、このペンにする!」
すると真白はふぅん、と品定めをすると1つのペンを手に取った。
「じゃあ私はこれにする」
「え、俺のと同じやつ?」
「色が違うからいいの!」
真白が手に取ったペンは自分の選んだペンの桜色バージョン。
彼女は頬を染めながらペンを眺めている。
…なんだかよく分からないが嬉しそうだな。
そのまま2人でレジに向かい、商品を差し出し財布を取り出す。
こちら1点で…とレジの人が会計を進める。
すると、真白が割り込み、千円札を2枚と商品を差し出した。
「ちょ、お前…」
「いいから、私が払うよ」
今日はどうしたんだ…?と思いながらとりあえず店の外に出て待つ。
すると彼女はすぐに出てきた。
「はい、ちょっと遅れたけれど誕生日プレゼント!」
「え、あ、ありがとう…」
一瞬キョトンとしたが、思い出す。
今日も忙しない1日だったため全く持って意識しなかったのだが今日は俺の誕生日である。
「え、真白…覚えててくれたのか…」
「あったりまえでしょ、でも、亮の好きな物わかんなかったからさ…」
つまり、今日のデートというのは俺の誕生日プレゼントを選ぶための誘いだったという事だ。
「真白って中々粋なことするよな~」
「うっさーい!」
とはいいつつ顔を赤らめている彼女に少しドキッとした。
…なんてな、気の迷いだろう。
「あ、筆箱買うの忘れた…」
「筆箱…?あー結構ボロボロだったもんね」
「そうそう…まぁ、いいや」
「また私と来る?」
「え」
「なーんでもないっ」
同じような日々に一区切り付けたこの日。
11月15日は彼女の横顔と共に忘れることが出来そうになさそうだ。
「あ、そうだ」
彼女は隣で思い出したように呟いてこちらを向く。
「ねぇ、亮って何色が好き?」
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