【第2話】 正夢
「ねぇ、亮って何色が好き?」
唐突な質問に驚きつつ隣を歩く真白に目をやるとなにやら頬を染めていた。
「なんだ?急に」
「…丁度この間栞を友達と作ってさ、亮にあげよっかなって思ったのっ、別に要らないんならいーけどっ」
「要らないとは言ってねぇよっ…まぁ、強いて言うなら青かな…」
「良かった…んじゃ、はい、あげる。喜びなさい!」
「こいつ……まぁ、さんきゅ」
受け取った青い紐のついた押花の栞は可愛らしく花の形にカットされており裏に何やら文字が書いてあった。
『大切にしてよね』
顔を上げると恥ずかしいのか彼女は数歩先を歩いていた。
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ジリリリリリリリリリッ
耳元の目覚ましが騒ぎ出すと、意識と同時に感覚も夢から帰ってくる。
「さみぃ…」
例年この時期ってこんなにまだ寒かっただろうか。いやこんな寒くはなかっただろ。。
無意味な自問自答を繰り返すつつ目覚ましに手を出すと同時に針の指す文字が目に入る。
「8時…やべぇ遅刻するっ」
意識はフル覚醒した。
「お前が遅刻するなんて…朝からまさかお前…」
手でわっかを作り上下にふるという小学生並の下ネタをぶちかましている彼は
クラス中から『クレイジー平野』という異名を持つ程の変人である。
ちなみに彼にとってクレイジーとは褒め言葉らしい。
「おい三月君、こんな朝っぱらから汚い話題をだすなよ勉強のやる気が削がれる」
セリフだけでわかるこのガリ勉は
文芸部の来ないメンバーの1人。
理由は部室よりも図書館の方が集中できるかららしい。
三月とは中学からの友達らしいが殆どその立ち回りは真面目な彼らしい制止役である。
しかしそのためか、『康田ストッパー』という異名が着いてしまったらしい。
お気の毒だな。
ちなみにかなりのむっつりスケベである。
「流石だよねクレイジー平野くん…」
「うおぉ、お前起きてたのかよっ」
そして、むくっ起きてきた彼は
唯一自分と中学が同じ友達で学校内ではほぼ、寝ているためか『眠りの山根』と、よく呼ばれている。
彼も部室にソファがあって寝やすいから、と言って入ってきた文芸部部員なのだが、最近ネットで人をダメにするソファたるものを買ったらしく部室に来なくなってしまった。
うちの部活は幽霊部員ばっかで大丈夫なのだろうか…。
「にしても、ラッキーだったな、亮君、今日に限って担任が体調崩して午後から出勤なんて」
そうなのだ。運が良かったのか遅刻がばれず遅刻扱いにはならずに済んだらしい。少し嬉しい。
「まー、俺の日常生活の行いの良さだな」
「嘘くせぇ」
「なんでだよっ」
─キーンコーンカーンコーン
いつも通りの茶化し合いが一息ついたところを見計らったようにチャイムが鳴った。
今日も授業だりぃな…。
窓側一番後の自分の席に戻り、号令を終えたところで着席し、ぼーっと外を眺める。
一体…なんであんな夢見ちまったんだろな…。
あんな夢…存在するわけがないのに。
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