【第1話】 鏡々岡文芸部
寒さが身に染みてくる11月の中頃。
窓の外に目をやると辺りはすっかり闇に包まれ寒々としている。
ここ私立
部員は総勢7名。
しかし活動はせいぜい数ヶ月に1度出版される学校誌に載せなければいけない小説の作成ぐらいで、めったにほとんどのメンバーは集まらないのが現状である。
そんなわけで基本的に集うのは俺含め今いる3名ぐらいであった。
「ねぇ、亮、この書き出しどう思う?」
髪をかきあげ、ボールペンを器用に回しながら原稿用紙を差し出してくる彼女こそが
家が近く親同士の仲も良い彼女の家庭とは昔からよく縁があり、そのまま一緒に中高一貫のこの学校に合格したのだった。
まぁ、腐れ縁というやつであろう。
「どれどれ」
彼女が差出した原稿用紙に目を通す。
本…物語…。
なるほど、物語に惹かれ、自ら描いていく少女の物語か。
「いいんじゃないか?童話のような書き出しも面白いんじゃないかと思う」
「ほんと!?やったぁ~」
手を叩いて喜ぶ彼女。嬉しそうでなにより。
「それで、音子は何してるんだ…?」
部屋の隅にあるソファの上で毛布に包まり寝転がっている彼女─
彼女は真白と同じクラスでつい最近転校してきた新入部員である。
基本的に行動はマイペースであり、性格に言葉を当てるなら不思議ちゃんと言ったところだろうか。
転校してきて最初に仲良くなったのが真白らしく、くっつかれているのを良く目にしたが気がつくとこの部活の部員になっていた。
「寒いからここから出たくないのですぅ」
「アホか、まだ11月だぞ…これからどうやって冬を乗り切るんだよ…」
「音子が住んでいた沖の縄はこんなに冷えるところではなかったのですぅ。冬眠しますぅ」
どうやら南の方から来た彼女にはここの寒さはかなり堪えるらしく、そのまま毛布に顔を埋めてしまった。
縄で縛って沖に投げ捨ててやろうか。
売店で買ったミルクコーヒーを1口飲んでから、ふぅ、と一息つき、自分も部員紹介の欄の構成を再開する。
運動は疲れる、そんな理由でふらりと入った文芸部に入った俺─
成績は中の上で記憶力だけはいいらしく暗記教科で困ったことはない。
好きな物は洋梨で誰かと話をすることはわりと好きな部類で、ここ最近の困ったことは小説を書く時にら抜き言葉で書いてしまうくせが抜けないことである。
…うん、もういいや。尺稼ぎはこれぐらいにしておこう。
それより、部員紹介とは思ったより難しいものだ。
─最終下校時間になりました。校舎内にいる生徒は速やかに下校してください。
丁度部員紹介のページを書き上げたところで放送が入り机上のものを片付ける。
「じゃあお先失礼しますですぅ」
「おう、お疲れ~」
簡単な言葉を交わし音子を見送り自分達も帰路に着く。
「確か今日って流星群が流れる日よね?丁度今ぐらいじゃない?」
真白に言われて腕時計に目をやると時刻は19時を過ぎている。
流星群は19時半から見ることが出来ると今朝テレビでやっていたのでそろそろだろう。
「公園でも寄り道してくか」
「うん!」
まだ夜は長そうだ。
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