第25話冒険者体験ですか?(1)
軽蔑の目で見られたのは、久しぶりだった。
席に座るとクリスとサシャが近づきてきた。
「ベル君…勇者のことを侮辱したの?」
とクリスが聞いてきた。
「侮辱…か、うん、相手がそう思うならそうなんじゃないかな?」
「勇者を侮辱するというのはは、あまり頭のいいベル君が取りそうな行動とは取れないのだけれど…」
「そうだね。昨日言ったことは本心だから…まぁ嘘が出回ってないからいいんじゃない?」
Sクラスの中でも、ベルによく魔法のことを聞きに行っていたものは信じられないと言うような顔をしていた。
あと、8ヶ月で高等部が終わってしまう。これからは学校に幾度に軽蔑された目で見られるだろう。自分としてはあまり痛くないが、公爵家の名前に泥を塗ってしまったことになる。
母や父に事情を説明すると"気にするな、お前が怒ってしまうのもしょうがない。"といってくれた。
それからはクリスとサシャは話しかけてくれるが、他の人はあまり話しかけてこなくなった。
侮辱したという噂は、取り巻き達が話して回っていたとサシャが教えてくれた。
ベルはため息をつきながら、授業を終えた教室から出た。
2週間が経ち、3年生のAクラスとSクラスだけが受ける冒険者ギルドの体験があった。
内容としては、三日間でクエストを選び、それを達成、報告書を書き次の日に提出するというものだ。
メンバーとしては3人〜4人1組にBランク以上の冒険者が1人つくことになっている。
ベルは勇者を侮辱したということで、余ってしまった。クリスとサシャには僕と組むと余計なことになるから他と組むように言った。
1人でいると、後ろから声をかけられた。
「1人ですか?」
とても聞き覚えがあるなぁと思いながら後ろを向くと、「お久しぶりです」と言いながら礼をしてくるギルド長がいた。
「お久しぶりです。1人ですね。まぁセツラがいるので大丈夫ですけど。」
と言いながら笑った。
するとギルド長がとんでもないことを言ってきた。
「私が冒険者枠に入りますよ。仕事も終わっていることですし。」
と楽しそうに言った。
その後、クエストの受け方や借りれる装備の説明があり、ベルは短剣を借りた。
ギルド長と話しながら、クエストを決めていると、
「あなたがギルド長ですか?」
と僕の嫌いな奴の声が聞こえてきた。
「はい。そうですよ?あなたは…なるほど、あなたが勇者様ですか。」
「ええ、ですから勇者様の冒険者枠と代わりることを許すわ」
と気の強そうな勇者の取り巻きが言ってきた。
「いえいえ勇者様はお強いのですから、私は要らないかと。」
と返すギルド長に対して勇者が…
「そのような奴の所ではなく僕と来る方がいいと思います。」
「そうよ!それに勇者様に何かあったらどうするつもり?!だからそんな奴のことはいいので、私たちの冒険者枠に入りなさい!」
と言った途端、ギルド長の雰囲気が少し変わった。
「勇者様のところの冒険者のことを信用出来ないと…なるほど…」
「構いませんよ。僕は1人で大丈夫ですから。」
「それは知っているのですが…」
そう言っているギルド長に耳打ちをした。
「面倒臭いので出来れば勇者の方に行ってあげてください。」
「はぁ、分かりました。厳しく指導してきます。」
僕は知っていた。ギルド長は鬼と呼ばれるほど厳しいことを。そして、それが故に王様からも信頼されていることを。
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