秋の夕暮れ

 昔の人は自殺が多いのだろうか……? いや違う。今だって多いのだ。ただ、あまり注目されていないだけなのだ。多すぎて、多すぎて。


 愚かだ愚かだ、何もできない自分が。平然とあり続ける目の前の社会ガッ!


 そして僕は今、君の墓の前にいる。


「ごめんね……何もできなくて」


 この世界の僕は君と別れたらしい。いわば他人だ。しかし、それでも君の死を止められなかった罪はでかい……恋は罪悪、先生とはまた違うケースだけど、それでも僕の心を壊すには十分な出来事だった。


「ごめんね……何もできなくて」


 新しい明日が来る、そんなのは当たり前じゃない。軌跡に奇跡が累乗されて現れるものだ。でもこの世界ではもはや当たり前と認識されている。


 なら、当たり前で突き通してくれよ……!


 目の前の墓に泣きながら僕は語りかける。白骨死体ならば、僕は抱きしめた。でもその墓石は君であって君じゃないから、抱きしめる価値はなかった……。


「ごめんね……何も、何も、何も……」


 あーあ、秋はセンチメンタルになるから好きじゃない。

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