夏の夕暮れ

 どうやら死ななかったらしい。


 どうやら死ねなかったらしい。


 また僕だけが生き残ったこの海のせかいへやってきてしまったらしい。お願いだからこの悪夢から目醒めさせてくれないか?


「あっ、酸素ボンベ……。まだ残ってる。でも後一回分くらいしかない」


 でも気にせず潜水、潜水、潜水……。どうせ途中で切れてもここで死ぬだけ。悪くないさ。


 指輪が絡んでる死体が一つ。認めたくないが君らしい。


 白骨死体と殺人鬼


 どちらの方がマシだろうか? いや、どっちだって耐えられないか。


「大好きだよ、君が。もう二度と言えないかもしれないけど、いや、もう二度と言えないかもしれないから、ここで言うよ。


 大好きだよ、君が。できることならもう一度キミニアイタイヨ……」


 ぐ、ぐ、う、うわ、うっずは。泣く。


「「気が合うね!!」」


 そう言ってたあの笑顔は、もう白くなってビクとも動かないし、むしろヒビが入ってるし。


 さようなら……さようなら……そう呟きながら、僕は浮上していく……。

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