Drift30 脱出
「ぐぁっ……!」
うー、酷い感覚だ。ちょっとばかしフラっとくるぜ。あー気持ちわりぃ。
『Ms.K? 聞こえてますか?』
「ああ、聞こえてる感度良好。すんごい気持ち悪かった」
『動けますか?』
「大丈夫だ。それよりオペレート頼む」
体中ゴキゴキ鳴らせてゴワつきを取る。全く寝心地悪いベッドだぜ。
『まずはそこから左へ』
「了解!」
オペレーターの指示通りに進む。今回ばかりはオペレーターに頼りっきりだ。左、右、左、上、下、とにかく言われる方向へ最高速かつ無音で走る。監視がいりゃ一瞬で沈黙させ、開かない扉はオペレーターが一秒で開ける。「
「おい、カイトのところはまだか!」
『その角の左の部屋です!』
「ぬんおおお!」
高速移動にブレーキをかける。ここにカイトがいるんだな。今すぐ行くぞ。
「……これは酷ぇな」
カイトのカプセルに近寄ってみれば写真よりも酷い有様が目に飛び込んでくる。どんな事したら人間がこんなになるんだよ。撫でようにもどこを撫でればいいんだ。どこもかしこも痛々しすぎる。
『Ms.K、時間が』
「……分かってる。カイト、もう少し待っててくれよな」
カイトをログアウトさせて貰い、丁寧に抱えて少し速度を落とし、ヴェインの所へ向かう。待ってろヴェイン、お前も今すぐ出してやる。
カイトを担いでる分、更に動きの無駄を削ぐ。監視の奴は最小限の動きによって気絶かあるいは殺す。今回は人間だからといって容赦はしない。殺す価値もないが邪魔だから殺す。今回は殺す。殺す角度になってる奴が悪い。
それにしても時間がマズい。恐らくヴェインは私ほど早く動けない。
「ヴェインの位置は!?」
『100m先を右、50m先直上! 正面に部屋!』
「はいよ!」
曲がり角まで一気に走り、左足で床を蹴って正面向いたまま右にスライドして跳ぶ。50m地点でスライドを屈伸なし垂直跳びでキャンセル、階を二つ飛んで着地。
「ここか、よしヴェインは……」
中に入る。そこには一回りデカいカプセルがあった。間違いないこれだ。ドでかい身体にブレード型の義手。一発でわかる、こいつは化物だ。
「オペレーター、ログアウト処理は?」
『出来てます』
「ヴェイン! 起きろ、ヴェイン!」
「……っ! はぁ、はぁ!」
「立てるか?」
「はい、大丈夫です。しかし身体の自由が……うっぐ!」
多分今と向こうの身体状況がリンクしてない影響だ。動けなくても不思議じゃない。クソッ……こうなったら!
あんまりやりたくないが部屋にあった電気プラグ使って身体に蓄電し電気を纏う。
「うおっ、と。ヴェイン、私の背中に乗れ! 早く!」
「あ、ああ」
「ちょっと痛いが我慢してくれ」
ヴェインの身体を鋼糸で私の身体に縛る。んでカイトを前に抱えて走る! コイツぁ、ちとキツいねえ。だが出来ねえ訳じゃあない。
何でかって? 私は化物だからさ!
更に遅くなった速度をカバーする為、電気のパワーで筋肉への信号伝達を脳を介さないを反射クラスの速さにし、移動速度を上げる。ついでに、帯電していると私は走りに振動を無くせるんだよ。
もっと動きの無駄を削る。もう気絶させるのは無理だ。殺すか無視しかない。死体を発見されて騒ぎになったら面倒くさいから出口までの敵は目につき次第殺す。幸い、オペレーターのおかげで敵がどこにいるかの情報はあるから上手い具合に何とかなる。
「オペレーター、脱出ポイントまでどれくらいだ!?」
ほぼ無音で暗い通路を走りながら聞く。時間がねぇんだよ、クソッ!
『その通路の先が外に繋がっています! その近くに車両!』
「了解!」
思い切り走り抜ける。
お、出口だ出口!
「よっしゃ、出た! 足はコレか。ヴェイン鋼糸解くぞ。乗れるか?」
「ああ、大丈夫だ。カイトは私が抱えておくよ。その身体では座席には座れない筈だ……」
「……頼んだぞ。飛ばすからしっかり支えてやってくれよな!」
――ヴォォオオオオン!
アクセル全開、ぶっ飛ばして指定ポイントまでいけばどうとでもなる!
「行くぜオラアアアアア!」
明かりは要らない。見えてるし点けたらバレるからな。
漆黒の夜道を走り抜ける。
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