Drift25 抉開

 まずは話すか。この推測……いや確信を。


「……カイト、魔石板あるか?」

「え、あ、はい」

「ありがとよ」

 魔石板、思えばコイツが出た瞬間、カイトに初めて見せてもらった時に気付けた筈だ。ま、あの時はカイトの可愛さに舞い上がってたから仕方ない仕方ない。

「あの……何を?」

「危ないから離れてな」

 ちょっと今回はマジ。ていうか確信がマジならだぞ。


「ウオラァァァァアア!!」


――バリィィィン!!


「ちょっ! おねえさん!?」

「なにしてるんですか!?」

 二人が驚くのも無理はない。なんせ魔石板をんだから。


 そんでもって予想通りの結果が出る。

 割れた中から出てきたのは

 


 だ。


「こ、これは……!」

「はぁーあ、嫌だねぇ」

「もう意味不明です……分かるように説明して下さい……」

 嫌な予想程当たるもんだ。あーヤダヤダ。まぁオペレーター呼ぶか。

「はいよ、まぁ私じゃ無理だから『オペレーター』に頼むわ」

 出てきたタブレット端末に私の無線を連結リンクさせる。うーわ感度最悪だ、雑音入りまくりじゃん。まぁオペレーターに繋がればクリアになるだろ。

「おーい、オペレーター? 返事しろー」

『やっ……つなが……!』

「なんだぁ? ……こんのポンコツタブレット!」

――ガンッ!


『ああ! やっと繋がりました! 何度もアタックしたんですよ』

「夜の変な通信みたいなのはお前か。安眠の邪魔しやがって」

『酷いですねー心配したんですよ』

「まぁいいや。カイトとヴェインに説明してやってくれ。お前全部分かってんだろ?」

『ええ、まあ。今までの事もこちら側では観測出来てましたから』

「うわ、出歯亀変態野郎め」

『残念、野郎じゃないでーす。あ、初めまして。とりあえずそちら側について説明します』


 オペレーターの説明、先ず端的にいえばこの世界は「作り物」だ。私らは現実世界でカプセルに入れられて脳がこの世界を現実だと思わされながら動いている。

 私ですらほぼ完全に騙されてたんだ。よっぽど凄いぜ。開発者は褒めてやるよ。

 しかし、欠陥は幾つかあった。一つはプレイヤーとして入る奴らは個人を識別する為に形はどうであれ魔石板を持つ必要があるって事だ。んでしかも極めて自然な形でシステムが持つ様に仕向けるし、持てる様に誘導する。

 そして欠陥とは正に魔石板そのものだ。巧妙に細工されているがこれは詰まる所旧来のVRMMOにおけるコンソール。流石に幾らファンタジーチックな世界でもタブレット端末があったんじゃ一発ゲームだとバレる。

 だからタブレット端末に細工して、そうは見えない様にした、という事。しかし幾ら巧妙でも「ステータス数値」だけはどうにもならなかったらしい。それが欠陥。普通なら気が付かない程の欠陥だが、私を完璧には騙せなかった。確証得るまで時間かかったがな。んで、魔石板、つまりタブレット端末のガワをブッ壊したら本体が出た、って感じ。

 だーが、魔石板がタブレット端末だって分かっても、面倒くさい事があった。それは出来ないって事だ。

「碌でもねーよな。ログアウトこっちから出来ないゲームとか」

『ええ、全く。ドクトルもデベロッパーも呆れてましたよ』

「「ログ……アウト?」」

 カイトとヴェインの言葉が重なる。そりゃそうか。二人共、るんだから。

「なぁカイト? お前は誰だ?」

「え、ボクはカイトですよ」

「なら、どこに住んでる?」

「この街です」

「じゃあ聞く。いつからここにいる?」

「それは……故郷から出て来てここに……あ、あれ?」

「故郷、わかんねーだろ?」

「な、なんで? 思い出せない……」


「思い出せないんじゃない。この世界にはカイトの故郷なんてんだ。ヴェインもな」








 記憶、それの扱いが二つ目の欠陥。 








「色んな意味で大事な部分の扱いが一番ヘタクソだな。このゲームは」

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