Drift24 核心

 ヤツは何なのか、何故こちら側にいるのか、そしてこのコアは何か。

「ホントに何か分からんな……」

 酒場から出て、コアをお手玉しながら家路につく。もう少しカイトに聞いた話では強力な魔物なんかを倒した時、稀に光るコアが取れるらしい。

 だが、このコアはそうじゃない。光ってもないし、こちら側では何物か分からない使い道のない物扱いなのだ。道具商やら骨董屋やら魔法道具店にいってもガラクタ扱いだったからな。

「本当に不思議なコア? です。四角い上に真っ黒なのが特に変だ。これじゃあキューブと言った方がいい」

「だよなー」

「うーん、あれだけ店を回ったのに名前すら出ないですもんね……」

「うーん……」

 らしくないぜ、こんなに考え事するのは。っと、家に着いた。あの後ギルドから家を一軒借りたんだよ。流石に宿ばっかりじゃ落ち着かんしな。まぁ、借りたっても形式上の話で実際は貰ったも同然。私らの口封じがしたかったのか「欲しい物をやる」と言われたんで家を貰ったのさ。

「たっだいまー! はー、我が家我が家。よっ、と」

「あんな話をした後だというのに貴女は緊張感というかなんというか……」

「んー、まぁそれはそれさ」

 私は一方的に話しただけだ。そんなに緊張も何もない。二人には驚く事ばっかかもしれんがな。

 そーれにしたって絨毯の上でゴロゴロするのは良いなぁ。ここにビールとチョコレートと肴があればもう最強。



 家は二階建て、一階がリビングとダイニング、二階には部屋が三つあるんで三人でそれぞれ使ってる。豪邸って訳じゃないが十分広い。

「Kさん、今日はとりあえず会議でしょう? 酒場ではそのコア、迂闊に話に出せないって言ったのは貴女じゃないですか」

「ぬぅ……先延ばしにしたって面倒くさいしさっさとやりますか。カイト、会議室の扉開けてくれー」

「はーい」

 カイトが本棚の本を動かし、置物の位置を変え、鍵を回す。そうすると少しばかり小さな扉が開き、広い空間に入る。そこが会議室、魔法で空間を拡張したスペースだ。ここは完全防音を始めとして様々な外部からの干渉を受け付けない仕組みになっている。だから聞かれたくない会議したりなんだりに使えそうだと思い、作っておいた。

「んじゃ、このコアについての考えを言う」

 少し真剣な顔をする。

「……」

「一体……」


「これは、間違いなく私の世界の物だ」


 私の見解、街中では言わなかったがこれは間違いなく失敗作のコアだ。

「だが、細工されてる。お粗末だが失敗作強化の為だろうな」

 キューブ状になってるのは細工した影響だ。恐らくだがな。

「ふーむ、私達はそちら側を殆ど知りませんし信じるより他ないですが……」

「ボクも同意見です」

「そんで、憶測だが更に言える事がある。多分、

「「!!」」

 驚く二人を少しだけおいておき、話を進める。

「仕入れた、というより足で集めた情報なんだが、まだそれっぽいやつの噂があるんだよ」

「もしかしてここ最近一人で行動してた日があったのはそれの為に?」

「そうさ。でもな、不可解過ぎるんだよ。情報が」

「不可解?」

「ああ、不可解さが綺麗過ぎて不可解なんだ。まず、北の森を含めて四体いるんだよ。失敗作」

 不可解な点、それは失敗作の被害情報と出現位置。北は森で、西は湖で、南は沼で、東は山で、それぞれ被害があり出現している。そしていずれも、「姿が見えない」「後を追えない」「不意打ち」「死にはしない」という共通点がある……いや。それ以外の情報は全くないのだ。

 話してやると二人共その均一性の気味悪さに気づいた。

「確かに変だ。同じ個体だとしてもそれしか情報がないなんて」

「でもおねえさんだって情報を全てを集められた訳ではないんでしょう?」

「ああ、完全じゃない。だがギルドの依頼履歴と資料保管庫、裏通りの情報屋、街ゆく人間の声、その他に少し危ない橋の先から集めた情報だ。マシな方ではあると思うけどね」

「う、確かにそれなら……」

 情報源には納得を貰えたらしい。更に次の話へ繋げる。

「ヤツらの情報と出現、確かにこの二つは必ずしも同じタイミングに上がってくるとは言えない」

 当たり前だが前置きはする。そして……


「だがそれを抜きにしても、不自然なんだ。ヤツら。目撃情報すらも皆無なんだぜ」


「バカな……」

「で、でも確かにおねえさんが来るまでそんな話は一つも聞きませんでした……なんで気が付かなかったんだろう……」


「しかもだな、更に更に不自然な事に私が現れると同時に現れてたんだ。。変だろ?」








 さて、ここまで来た。私の本当の「この世界について」の見解を述べよう。








 先ずはアイツを、呼ばないとな。


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