Drift18 能力

 どう攻めるか、これが割と面倒な事だってのには薄々気付いてたがやはりそうだ。

「情報が少ない……」

 カイトの口から漏れる言葉は至極真っ当。何せ「北の森に正体不明の何かがいる」という以外に殆ど情報は無い。さっきヴェインが買い出しついでに情報収集したらしいが、「不意に襲撃された」「すぐに見失った」とかいう漠然としたものだけだ。


「ふーむ、どうしたモンか」

「森に入り込んでキャンプしつつ探索、というのが一番かと」

「対象の情報収集にはそれだなぁ」

「森そのものの情報なら知ってます。薬草採取に行ったり他の人の話を聞いてるので」

「なるほど、流れ者の私と異世界から来たKさんには必要な情報だ」

「ああ、一から集めるのは大変だからな。その点はカイトに頼むよ」

 よし、大体の話は決まった。対象の情報は現地収集、森そのものの情報はカイトが持ってる、後はキャンプを設営、っと。

 道具やら何やらはヴェインが揃えてくれたから軽く荷造りして明日に備えるとしよう。


 あ、そうだ。ステータスについてカイトに聞いてみるか。試着してたら店で聞きそびれたからな。

「なぁカイト、前に言ってたステータスってのはどうやって見るんだ?」

「あ、そう言えば説明してませんでしたね。えーっと……」

 そこから説明が始まった。なんでも魔石板に冒険者証を載せ、前と同じく魔石板を持てば詳細なステータスが冒険者証の裏に刻まれる様でやってみたら上手く行った。

「ほー、これが詳細ステータスか」

――

「K」

 Lv 155(100+55)

 Class ???


 HP 5500(3000+2500)

 MP 500


 POW 1500(1000+500)

 DEF 1100(1000+100)

 INT 450

 MID 1000(1000+0)

 SPD 2500(1000+1500)


 SKILL

 PASSIVE

徒手空拳コンバットマスター・極」

 素手・素足の攻撃力が飛躍的に上昇

武器取扱ウェポンハンドラー・極」

 あらゆる武器に適正を持つ

型無型有アーツオリジネイター・極」

 近接特技のMP消費は0になる

即時殲滅スライドスイーパー・極」

 あらゆる攻撃に弱個体への即死効果がつく


 ACTIVE

傾城魅了クイーンズテンプテイト

 対象を確実に魅了する(耐性貫通)

鋼糸連血スレッドブラッド

 対・単体 大ダメージ+部位破壊

 対・複数 10体まで同時束縛・攻撃

弧月麗蹴クオータークレイター

 美しき弧を描く踵落とし 気絶効果

刎首惨脚ネックチョッパー

 風を切る上段回し蹴り

――

 なんでも、POWが攻撃力、DEFが防御力、INTが魔法攻撃力、MIDが魔法防御力、SPDが敏捷性を表すんだそうだ。思いっきりゲーム感覚だなぁ。

 しっかしなんか技名になるとこそばゆいなコレ。私の場合は技らしい技がないのか通常攻撃がACTIVEになってる。

「やっぱり凄いですね……」

「いや、これは……ええ……」

 二人共、言葉失ってる。カイトはまだしもヴェインは化物だろうが。

「括弧の左数値が上限なんですが右数値があるって事は上限突破してる訳で……」

「しかも突破後数値がまさに化物ですよ、これは。私でもこんな数値は出ません」

 驚くカイトやヴェインのステータスも見てみたが、カイトは弱い。Lv15、三桁数値はINTとSPDが100ちょっと、後は二桁ばかりだ。……伸びしろあるねぇ。育て甲斐がある。それとSKILL「薬草学・修」「道具作成・修」を同時に持てるのは薬草学士だけであるらしく、カイトの僅かな強みになっている。「強者」を見極める目はSKILLに分類されないらしい。


 ヴェインは化物だけあってLv98、POWとSPDは上限に迫るがそれ以外はLv相応かそれより低い。だがヴェインはSKILL「闘志」の効果で格上を相手にする場合はステータスが一時的に相手と近くなる。更に大剣士のヴェインは「大剣適正・極」を持つ為、大剣を装備する限り、戦闘時は数値に補正がかかる。


 カイト曰く、まずLvや数値を上限まで上げるのからして大変で、更に上限突破しようとするなら一つに絞るくらいの構えでないと無理らしい。


「やっぱり私は化物ステータスって事だな」

 この一言に尽きる。


 さて、疑問もはれた。さぁさぁ今日も飲み会、といきたいところだがカイトが疲れたら意味がない。今回の仕事でカイトに経験を積ませてやりたいんだよ。万全で行かなきゃ人間には経験効率が悪くなる。まぁ、カイトの経験値稼ぎしてりゃ仕事も終わるだろ。


「よーし、んじゃ飯食って風呂入ったら寝るかぁ」


 出来ればカイトにはあっちの方の経験値も積んで欲しい。出来れば私相手で。


「うへへ……」

「……Kさん、良からぬ事を考えてますね」

「うーん、ヤバい。手出ししない自信がなくなってきた」

「無理強いはダメですよ……」

「勿論ちゃんと合意の上でだな……」

「はぁ」

 

 自信失くすのなんて滅多にないが今回はマジでヤバい。今回の仕事で私はカイトの一番の危険因子かもしれん。それ以外の敵? ブッ飛ばすだけだ。


 まぁ、今日のところは休みだ休み。 


――

――――


『……K……っ! オ……ー……タ…………

す! お……う…………を!』


「はっ!」

 やけにリアルな夢で目覚める。いや、見えたのは暗い空間でリアルってのは何か違う。聞こえてきた音が形を持ってる様だったのは一体何だ? 

 それに聞き取れない部分が多い。雑音の入りまくった無線と比べても酷すぎた。

「はぁ、まぁいい。寝よう」

 考えても仕方ない。カイトも隣で気持ち良さそうに寝てるし起こしたら悪いからな。

(しっかし、聞いたことある様な声な気も)

 そんな考えが浮かんだあたりで私も眠りに落ちた。






 さて、明日は出発だ。

 

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