hunting

Drift19 出発

「よーし! 出発しますかぁ!」

「おー!」

「天気も良いし最高の出発ですね」

 さぁさぁ、森へ向かおう。荷物はなかなか多くなったが仕方ない。上等なキャンプでなきゃキャンプする意味がねぇ。ああ、それから出発は未明にした。あんまり人目につかない方が良いからな。

「まずは頼んどいた馬車を拾いますか」

「ですね。街の入口付近に手配しました」

「ボクが早く動ければ良かったんですが……」

 馬車を手配したのはカイトの為だ。私ら化物二人なら馬車使うより走った方が早いんだがカイトはそうはいかない。背負って走るのもアリだが多分カイトの体調が悪くなる。それに早く動いたらいくら未明の出発でも目立ちかねん。

「気にしなくていいぞ。のんびり行くのもたまには悪くないし、そもそも私は馬車初めてだから楽しみだし」

「私も貸し切りは久々ですね」

「なら、いいんですが……」

「そんなに気になるなら抱きかかえて走ってもいいぞ」

「そ、それは恥ずかしいので……」

 ははは、可愛いなぁ。と、そんなこんなで馬車まで着いた。荷物載せて私らも乗っていざ出発!


 未明の出発ってのは何だか面白い。徐々に明るくなる空、闇と光のコントラスト、浮かび上がる絶妙な色、そこはかとなく変わる空気、いっつも任務で見てたりするがこの世界のそれは違って見えるし感じる。化物じゃなくても分かるんじゃねぇかな? この違いは。

 ふと、カイトを見れば眠り足りなかったのか私の肩を枕にして眠ってる。仕方ない、膝枕してやろう。全く可愛い限りだ。

「やっぱり、カイトくんにはちょっと早い出発でしたかね?」

「そうっぽいな。仕事でもこんなに早くは起きなかったって宿の旦那も言ってたし」

「カイトくんは確かに弱いですけど、愛してくれる人にはとことん愛されてますね」

「だろうな。ギルドやらじゃ除け者だろうがカイトの強さはステータスじゃ測れねぇよ」

「同感です」


 カイトの強さは数値に無い。SKILLにも無い。当人にすらイマイチ分からんだろうそれが分かるのは極一部の存在だけだ。


「森の入口に到着しました。あの……ここから先は……」

 御者が到着を告げ、少しビビってる様な物言いをする。そりゃそうだ。得体の知れない何かに襲われるかもしれんのだから。

「ああ、ここまでで大丈夫だ。カイト? 着いたぞ」

「ん……あぅ、寝てたみたいです……」

「荷物を下ろして中に進みましょう」

「カイト、動けるか?」

「はい、大丈夫です」

 三人揃って馬車を降り、ササッと荷降ろしして御者を帰らせる。さてと、まずはキャンプ地点を探しつつ、調査だな。


「今のところ以前来た時と大きな違いは無いですね……」

「変な気配も無いな」

「ええ、多少の魔物や野犬の類は居そうですが特別何かというのは無いかと」

 森を進むが現状手がかりはない。カイト曰く、まだ森の深度は浅いというのも影響があるらしい。強力な魔物は深い所にいるのが大半だそうだ。


 しかし今回の対象、ターゲットは浅い所にも出現している。人を襲い、目撃情報すら殆ど与えぬ間に姿を消し、捜索には引っかからない、かなり強力である事は間違いないが、これだと森全体を怪しむ必要がある。

 何故なら痕跡が一つもないから。痕跡があるならとっくの昔に罠でも仕掛けて捕獲するくらいの事は出来るだろうし、この世界なら魔法でも使って追跡すればいい。

 だがそれが出来ないなら、ターゲットは「痕跡も残さない」「見えもしない」という「完全ステルス」だ。恐らくあっちの技術でも捉えられんだろう。だからターゲットは「この森全体をねぐらにしている」可能性もあるのだ。今もステルスで近くにいるかもな。カイトがビビるから言わんが。


「はーあ、こりゃやっぱり面倒かもな……」

 三人で大分と探し回ったが収穫が少ない。こうなってくると先ずはキャンプ地点を確保する方が良いだろう。

「どうする? 先にキャンプ張るか?」

「それが良い様な気がします」

「早めですが問題ないでしょう。落ち着きたいのもありますし」

 なら、決まりだな。


「よっしゃ、キャンプ張ろう!」




 



 ちょいと早いがまぁいいや。快適なキャンプにしてやるぜ。

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