8.冷却設備は生命線

 当時のわたしは会社員として首都圏を転々としていた。だからこのエッセイの舞台もしばらくの間は関東ということになるわけで、より具体的に言えば2013年9月の時点ではわたしの生活拠点は埼玉にあった。


 埼玉は9月でもまだ暑さが充分残っていた記憶がある。


 記憶頼りというのもアレなので気象庁のサイトで調べてみたが、やはり2013年9月も最高気温30℃を超える日がちらほらあったようだ。


 気温が30℃なら水温はそれより低くなる。とはいえウーパールーパーの適正水温は15℃~20℃とかなり低く(熱帯魚の基準に慣れた今だとビックリする)、26℃を超えると体に負担をかけてしまうおそれがあるとされていた。この年の気温のピークは過ぎていたとはいえ、未だ予断を許さない状況であったと言える。


 冷却設備を導入しなければならない、と考えた。


 水槽を冷却するための手段は大きく分けて二つある。一つはクーラー。しかし、クーラーはそれ自体が高価である(※注1)ばかりか、別にポンプも必要となる。外部フィルターがあれば接続できるのだが、わたしは上部フィルター&底面フィルターの併用を選択していたため使えない。ボツ。


 自然、もう一つの選択肢、冷却ファンに絞られることとなった。


 冷却ファンというのがどういうものなのかと言うと、水槽内に風を送り込んで水を蒸発させ、その気化熱を利用して水温を下げるという仕組み。早い話が扇風機を水面に当てるのである。こちらは構造が構造なので安上がりだ。


 というわけで、アクアショップに走ってニッソーの冷却ファンを購入。サーモスタットはついていないタイプだったから、二〇〇〇円もしなかったはずである。


 設置してみたところ、ファンは問題なく稼働し、水温は24℃ほどに抑えられた。


 ……24℃かあ……。


「今はこれで乗り切れるけど来年の夏場はキツそうだなぁ……」


 一抹の不安を残しつつも、水温問題はひとまず先送りされたのであった。



     ◇ ◇ ◇



 ※注1:『アクア・デイズ』第22話を参照されたし。主人公・巳堂琴音が「諭吉が五枚は飛ぶ」と発言している。

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