6.パイプカット(意味深ではない)

 厄介なことになった。


 フィルターをセットしようとした瞬間……いや、正直フィルターを組み立て終えた瞬間にはもうわかっていた。


 このままでは設置できない。


 原因は、上部フィルターの吸水パイプだ。


 そもそも上部フィルターは、電動のポンプによって水を汲み上げ、箱状の本体内部の濾過槽に通して、排水口からまた水槽に水を戻してやるという仕組みだ。そういうわけだから、本体の下から吸水パイプと排水パイプがそれぞれ突き出すようなつくりになる。


 排水パイプは問題ない。水面より上にあってもいいので最初から短くできているし、水流を緩和するために途中で90度折れ曲がった構造をしているからだ。


 問題は吸水パイプのほうである。


 こちらはそもそも水に浸からなければ意味がないパイプなので、当然に長い。規格水槽の中層~下層までは届くように設計されているのだ。


 そしてわたしの水槽は、高さが規格水槽の半分ほどのらんちゅう水槽だった。


 吸水パイプが長すぎて水槽の底に干渉してしまうのだ。


 由々しき事態と言わざるを得ない。グランデ600は吸水パイプの長さを調節できる構造だったが、それをもってしてもらんちゅう水槽には対応できなかった。最短にしてもやっぱり底につっかえるのだ。


 ……切るしかない。


 わたしはノコギリを引っ張り出した。


 パイプはプラスチック製である。わたしにプラモデル製作などの趣味があれば相応しい工具があったのだろうが、残念ながらそうではないので、作業の様子はかなり大袈裟なものとなった。


 半分ほどにカットし、切断面をヤスリがけ。


 思いもよらないところで工程が増えてしまった。昼過ぎから作業をはじめたのだが、ウーパールーパーの新居が完成する頃、日は傾きかけていた。

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