5.フィルターを選ぶ
いろいろと考えた結果、オーソドックスに大磯砂を敷くことにした。
大磯砂というのがどんな砂なのかというと、海岸で採取された砂利である。目の細かさは一粒あたり2mm~5mmといったところだろうか。色合いは特に統一されておらず、黒い粒もあれば灰色もあるし、茶色や白だって混じっている。
田砂やガーネット、リアルブラックなどいろいろな砂が売られている中、なぜ砂利である大磯砂を選んだのか。その理由は、底面フィルターを使いたかったからだ。
底面フィルター。
水槽の一番下に簀の子のような板を敷き、排水用のパイプを一本立てる。その上から底砂を敷くことで、底砂全体を濾材として活用するシステムである。
拙作『アクア・デイズ』で述べたように(※注1)、濾過の肝はバクテリアだ。水槽全体に砂利を敷き詰めれば莫大な表面積を確保できるため、より大量のバクテリアを棲みつかせることができる。こと生物濾過(※注2)において、底面フィルターは最強のフィルターと言っても過言ではない。
一方、底面フィルターには物理濾過(※注3)を行う能力がない。
こちらは上部フィルターで補うことにした。上部フィルターは充分な広さの濾過槽と、メンテナンスのしやすさを併せ持っている。濾過槽をすべて物理濾過のために充てれば好パフォーマンスを披露してくれるのではないか、と考えた。
この方向性で吟味した結果、上部フィルターはGEX社のグランデ600カスタムがよさそうだったので、購入。ドライ層にマットを重ね、ウェット層にウールを詰め、ストレーナーにスポンジをはめたグランデ600は物理濾過モンスターと化した。
底面フィルターは正直どれでもよかったのだが、とりあえず同じくGEX社のマルチベースフィルターを選択しておいた。
ちなみにグランデ600とマルチベースフィルターは接続して運用が可能だ。上部フィルターのポンプによって水を動かし、底面フィルターに通す格好になる。ただしこれをやると物理濾過ができないため、個人的にはあまり意義を感じない。もちろんわたしはそれぞれ別個に使うことにした。
ともあれ、上部フィルターで物理濾過し、底面フィルターで生物濾過を行おうという結論に至ったのは、我ながら初心者にしては上出来だったんじゃないかと今でもひそかに思っている。
……が。
上部フィルターの設置に関して、たった一つ、大きな落とし穴が存在したのだ。
◇ ◇ ◇
※注1:『アクア・デイズ』第5話参照。
※注2:バクテリアのはたらきを利用して有害な物質を毒性の低い物質に変えること。
※注3:フンや食べ残しなどの異物を物理的に水槽内から取り除くこと。
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