『流石ですわ、お兄様』と褒めてくれる妹が欲しかったけど、何故か自称張飛の生まれ変わりの弟が養子で来て『さすがだ、兄じゃ!』と褒めてくれるようになった件について
僕、女の子から『兄じゃ』と呼ばれる。お兄様と呼ばれたいのに……。 ver2.0
僕、女の子から『兄じゃ』と呼ばれる。お兄様と呼ばれたいのに……。 ver2.0
モブ子に言われるまま、僕はそれほど汚れてはいないTシャツと下着を持ってきた。
Tシャツは白い奴で、最近買ってきた奴だ。
そんな汚れてはいないし、モブ子はきっと嫌がらないだろう。
下着はブリーフ派ではないので、トランクスだったが、こんなものでいいのかな?
「……臭い」
僕がモブ子に手渡すと、Tシャツとトランクスをくんくんと匂いを嗅いだ後、そうぽつりと呟いた。
「生乾きだった? それとも、それって僕への当てつけ?」
「兄じゃの想像のままに」
「……あ、兄じゃ?」
僕はついついそう反芻してしまった。
奇妙な響きだ。
女の子からそう呼ばれるのは。
「ええ、兄じゃ。万次郎お兄様がそう呼んでいるから私もそう呼ぶわね。私、あなたの名前を知らないもの。それに、あえて知る必要もない気がしているもの」
そこは万次郎を呼ぶように『お兄様』として欲しいところなんだけど、どうして『兄じゃ』になるかな。
万次郎はモブ子にとっては『お兄様』で、僕なんかは万次郎がそう呼んでいるから『兄じゃ』でしかないのかな?
「ならば、知ってもらうしかないかな? 僕の名前は桑原光臣。よろしくね」
「ヘルゲートと呼んだ方がいい?」
「……止めて」
「兄じゃでいいわね?」
「お好きなように」
どうやら僕の名前を覚えたり、呼んだりする気はさらさらないらしい。
ヘルゲートって呼ばれないだけマシとしておこうかな。
「僕は学校に行くけど、家から決して出ないでね。それと、冷蔵庫の中のものとか勝手に食べてもいいから」
両親には『モブ子が調子が悪いと言っていたので空き部屋で眠っています。気にしないでください』と書き置きをテーブルの上に置いた。
こんなんで納得してくれるかどうかは分からないけど、説明がないよりかはマシだろう。
「分かっているわよ。外に出たりはしないで、家にいるわよ。他の業者からお金を借りていたとか説明を受けたから出たくても出られないわよ」
「そっか。なら、いいや。僕は学校に行くけど、留守番よろしくね」
どういう話になっているのか把握しているようだけど、確認した方がいいのかな?
そういうのは終わらせてからでいいか。
「……何も訊かないの?」
モブ子が不思議そうな表情をして僕を見ていた。
「むごいことを口にするけれども、訊いたところで問題が解決するわけでもないし」
「……そう。氷よりも冷たい男なのね、あなたは」
「かもね。僕にとっては四百万円は通過点でその後があるからね。まあ、見ていてよ」
「ほらふき和尚? うその名人? それとも、嘘吐き兎? 嘘吐きが出てくる昔話って多いのよね」
モブ子は僕の事をさっぱり信用していないようだ。
「期待しないで待っているといい」
ま、そういう反応が多かったから、僕は超能力を使うのを控えるようにしたんだ。
『さすがですわ、お兄様!』
そう言ってくれる妹ができるまでは自重しようと思ったほどに。
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