『流石ですわ、お兄様』と褒めてくれる妹が欲しかったけど、何故か自称張飛の生まれ変わりの弟が養子で来て『さすがだ、兄じゃ!』と褒めてくれるようになった件について
許嫁の少女? いいえ、家出少女なのかも? 第二話 ver2.0
許嫁の少女? いいえ、家出少女なのかも? 第二話 ver2.0
万次郎が自称『許嫁』の女の子を見て、眉根を寄せて、
「それで、兄じゃ。その女子は誰じゃ? 兄じゃの良い仲の人かのう?」
さらに追い打ちをかけるように万次郎が口にする。
「え?」
万次郎の表情を伺うと、本当に知らない人を見る目で、女の子を見ていた。
どういうことなんだろう?
この女の子は万次郎の事をよく知っていて慕っているみたいだけど、万次郎の方は誰かのかが分かっていない。
つまりそれって、ストーカーとか?
そうでもなさそうだし、この女の子は一体誰なんだろう?
万次郎から女の子に視線を戻すと、女の子は今さっきの一言でトドメを刺されたように今すぐにもこの世から消滅してしまいそうな儚げな表情、瞳孔が開きそうな目をしていた。
「たぶん……モブ子さんだ。僕の遠い知り合いなんだ」
僕の事をモブみたいな顔って言っていたけど、この様子だと万次郎の中ではこの女の子は『モブ』みたいな存在だった気がしないでもないし、仮にそう呼ばせてもらおう。
超能力を使ってこの女の子の名前と素性を直接脳から聞き出す事ができるけれども、それは失礼なような気がする。
万次郎が思い出すまで、あるいは、この女の子が自ら名乗るまでは、そういう事にしておこうかな。
今日初めて会ったけど。
「タブンモブ子さんというのじゃな。珍しい名前じゃ!」
……万次郎、追い打ちをかけすぎだよ。
自分で言っといてあれなんだけど、遠い知り合いってどんな知り合いなんだろうな。
その事に疑問さえ抱かないだなんて、万次郎は本当に人が良い。
「兄じゃ! 今夜はすき焼きなのだろう? 早く帰って食べねば!」
万次郎はそう言うと、意気揚々といった調子で家の中へと入っていった。
「……だ、そうですよ、モブ子さん」
万次郎の姿が家の中に入ったのを見届けてから、僕はモブ子さんと向き合った。
この際、この少女の名前はモブ子でいいか。
こんな感じじゃ、このままとぼとぼと、いや、逃げるように帰宅しそうだし。
モブは一コマとか二コマ出て、その後は出てこなくなるように、これで終わりかもしれない、このモブ子さんは。
「そう! 私はタブンモブ子! あなたの遠い知り合い……よね?」
さっきまでの地獄の底に落ちたかのような表情が嘘のように晴れやかなものになっていた。
開き直ったというべきか、もうやけくそになっているのか……。
そのうちに万次郎が思い出すことを期待しているのか。
僕としては害がなければ、どっちでもいいか。
「遠い知り合いなんだし、あなたの家にお邪魔してもいい?」
「はい?」
拒否権を発動させないような目で僕を見ながらモブ子さんが言ってきた。
「いいわよね? モブ夫くん?」
「いや、僕の名前はモブ夫じゃなくて、桑原光臣っていう名前があるんだ。で、君の本名は何なの? モブ子さん」
「私はタブンモブ子でしょう? それで何か問題でもあるの?」
もう完全に開き直っているみたいだし、この様子だと何か事情があるのかな?
それとも、万次郎の傍にいて、思い出すのを待ちたい……とか?
詮索する気もないし、まあ、いいか。
「……って!」
モブ子さんが僕の許可も得ないまま、家に入っていくんだけど。
「何か問題でも?」
「どうして僕の家に入ろうとするの?」
「遠い知り合いなら、家に入って遊んでも問題ないわよね?」
そして、僕の答えを待たずにずかずかと玄関のドアを開けて、家の中へと入っていった。
「……問題あるよ」
知らない人を家の中に入れちゃうんだし。
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