『流石ですわ、お兄様』と褒めてくれる妹が欲しかったけど、何故か自称張飛の生まれ変わりの弟が養子で来て『さすがだ、兄じゃ!』と褒めてくれるようになった件について
ピーチネクター片手に桃園の誓いを 第三話 ver2.0
ピーチネクター片手に桃園の誓いを 第三話 ver2.0
どうして僕の両親が、張飛の生まれ変わりを桑原万次郎なんていう子供を養子として引き取ったのか、それを説明しないといけないかもしれない。
数ヶ月前、僕の両親が僕を置き去りにして、群馬県の温泉地に行った時の話だ。
地方には暴走族がまだ現存していたりする。
暴走族なんていうものは、東京では絶滅危惧種で、両親はそんなものがいることさえ忘れていて、二人して陽気に車で観光していたらしい。
そんな時、『黄巾の族』という黄色いバイクに乗るのを至上としている暴走族の一団に絡まれるような事をしてしまったらしく、山間部で二十台のくらいのバイクに取り囲まれた。
両親は恐れ戦いて、もう帰れないんじゃないかと思っていた矢先、
「お前ら! 集団で弱い者いじめか! 恥を知れ、恥を!」
そんな威勢の良い声が聞こえてくるなり、桑原万次郎がどこからともなく飛び出してきたという。
「なんだ、なんだ! お前らは! 弱い者いじめをするとは嘆かわしい! 強い奴にぶち当たらなくてなんとするか!」
黄巾の族の人達は両親の事なんてもうどうでもよくなったのか、万次郎に突っかかり始めた。
「俺をやるというのか! その心意気受け止めた! 全力でかかってい!」
万次郎はそう言うなり、
「うおおおおおおおおおっ!」
雄叫びに近い声を上げながら、道の端に生えていた巨木を地面から引っこ抜き、飛びかかってこようとしていた黄巾の族の奴らをなぎ払い始めたそうだ。
しかも、バイクを両手で軽々と持ち上げて投げつけるなど、人間離れを通り越して鬼神みたいに暴れ回り、黄巾の族を半壊させていた。
両親はそんな万次郎を怖がることなく、話しかけて、その境遇を聞いて涙したという。
小さい頃から髭が生えている上、人ならざる者と言えるほどの怪力さを両親に忌み嫌われ施設へと預けられたのだという。
その境遇を知って、両親は涙して、万次郎を養子として引き取ることを決めたそうだ。
未開の地と聞いている群馬県って怖いところだな、なんて僕はその話を聞いて思った。
というか、『流石ですわ、お兄様!』と言ってくれるはずの妹はどこにいる?
養子縁組で、妹ができるんじゃなかったの?
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