第75話 曾祖母が生きた地

「どうした、グイファス」

「大蛇の現在の姿について、私から説明したいことが」

「申してみよ」


 ギオルグの言葉に、グイファスは立ち上がり、そしてまずメレンケリにこう言った。

「メレンケリ、フェルさんの話覚えているか?」


 メレンケリは急に自分に話しかけられたので戸惑った。しかも、グイファスが呼びかけたお陰で、自分に視線が集まりおろおろしてしまう。だが、グイファスは落ち着いた声で、再びメレンケリに声をかける。


「メレンケリ、フェルさんのだよ。覚えているだろ?」

 その瞬間、メレンケリはグイファスの方に気持ちを向けた。他に誰かがいることなど気にせず、彼の真剣な金色の瞳だけを見ることにしたのだ。

「ええ」

「そのときの大蛇の姿について、推測していたよね。それをここで話してもいい?」

「どうして私に許可を取る必要があるの?」

「それは君に関わることだからだよ。そして、このことを話さければ君も危ない目に合うかもしれないから」


 グイファスの言っている意味が分からなかったが、危ない目に合うのは御免だった。


「いいわ。危ない目にはあいたくないもの」

 するとグイファスは頷いて、ギオルグとリックス少将に顔を向けた。

「実は、ジルコ王国のまじない師より、こんな情報を貰ったのです。現在の大蛇は、メドゥーサ・アージェの姿をしていると」


 すると、その場がざわざわとざわついた。ただマルスだけが、じっとグイファスを見つめていた。


「メドゥーサ・アージェとは誰のことだ?」

 ギオルグの質問に、グイファスが答える。

「メレンケリの曾祖母だそうです」

「しかし、何故彼女の姿をしていると、どうして言えるのですか?」

 サーガス王国の騎士の一人が、グイファスに尋ねた。

「そのことについて話すと少し長くなってしまうのですが、宜しいですか?」

「構わん、話してくれ」

 ギオルグに言われ、グイファスはメレンケリを見た。彼女は頷き、全てを話していいと頷く。この国の平和な未来の為に、と。

 その時、メレンケリはふとこんなことを思った。


(そうだわ……よく考えてみれば、私の曾祖母であるメドゥーサ・アージェはこの国の出身。私の体には、この地の血も流れているのね……)


 曾祖母という存在はメレンケリにとっては遠い存在である。だが、確かにこの地で生きたメドゥーサ・アージェがいたからこそ、今の自分がいて、そしてサーガス王国にいるというのが何となく不思議な感覚だった。

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