*
開拓基地へ戻ったドロシーは指令室へ行き、メインコンピュータを起動した。先ほどマキル夫妻に聞いた話を再度検証するために。
データを漁ってみても、〈ニルヴァーナ〉という語は
ドロシーはマキルの言葉を思い返した。
――〈思念〉のエネルギーを集めて〈種子〉を創る。ニルヴァーナはそのための演算をする。
思念コンピュータ――脳の畑に育った〈思念〉を演算素子にする。素子の数が欲しいから、
誰があんなシステムを創った? 異星人か。それとも、初めからあったか。それとも、宇宙消滅の危機感から、突然湧いて出たか……
ふと、隣りのサブコンピュータに挿されたままのメモリカードが目に入った。
何だろう? サブも起動してみる。
立ち上がったサブのディスプレイにカードのデータが表示された。
ドロシーは嘆息した。ポルノ動画だ。直前のアクセス・アカウントはボブ。
画面上にずらりと並ぶ無数のサムネイルのプレビューで、それぞれのカップルが絡み合って動いている。
異星で目にするそれは、なんて牧歌的だろう。こうして殖え、自分と家族を守るためにヒトは戦ったのだ。知性やら理性やらを得て別格のつもりでいた哺乳類も、繁殖と戦闘のときはケモノに戻る。
ポルノのサムネイル表示を閉じ、サブコンピュータをシャットダウンした。カードは抜いてボブのファイルケースに放り込む。
ニルヴァーナの擬似コンピュータは宇宙誕生シミュレーションを演算しているのに、こっちはポルノ映像再生処理の演算か……のどかなことだ。
あまりのギャップに失笑する。
空気が生臭いのはそのせいだ。デスク下のダストボックスに、丸めたティッシュが積まれていた。
ドロシーは服の上から乳房を触ってみた。
この張りのある躰は、オスを引き寄せるためにある――
誘惑に応じなかったデレクの抑制を思った。
絶滅寸前のオスが三匹、メスが一匹。オスに抑制がなければ、わたしは
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