13
二人は広いお庭をぐるっと一周、歩いてお散歩をした。
それからお散歩から帰ってきて、竹内のお屋敷の前まで戻ってくると、そこにはまだ、桃子さんが二人の出発の前と同じ格好のままで、立っていた。
「お帰りなさいませ」
二人にそう言って、桃子さんは丁寧なお辞儀をした。
「ただいま」
菫が桃子さんにそう言った。
それから二人は桃子さんと一緒にお屋敷の中に入り、ビリヤードやダーツなどが置かれているゲームのできる部屋に移動をして、そこで二人はチェスをした。
チェス盤がある場所はテラスのような場所になっている、とても素敵な場所だった。
桃子さんが持ってきてくれた飲み物を飲みながら、二人はチェスを楽しんだ。飲み物は菫がコーラを頼み、鶴がオレンジジュースを頼んだ。
チェスの勝負は三試合をして、三回とも菫が勝った。
それからビリヤードをして、少し疲れたのでチェスをしたテラスのところで休憩をしていると、いつの間にか外は赤色に染まっていた。
もう時刻は夕方だった。
……黄昏時。
それは、誰が誰なのか、わからなくなる、出会いと別れの時間だった。
「そろそろ、帰る時間だね」
菫が言った。
「帰りたくない」
赤色の空を見ながら鶴は言う。
「だめだよ。鶴。お茶会はもう終わりの時間だから」菫が言った。
「じゃあ、約束して」
「約束?」
「うん」
「どんな約束?」菫が言う。
「もう一度、必ず会える約束」鶴が菫の顔を見る。
菫はすごく真剣な顔をしていた。
鶴はなんだか、また少しだけ泣きたくなった。
わかってはいた。
なんとなくわかってはいたのだけど……。
「……もう、会えないの?」
鶴は言う。
「……うん」
にっこりと笑って菫は言った。
それは二人の永遠のさようならの、……瞬間だった。
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