今度の手紙にはお茶会の開催日時と時間。それからその日の服装には秋桜女学園の制服を着てきてもらうこと、ほかに必要な荷物は一切ないこと、すべては竹内の家で用意する、ということ、そして、その日に車で鶴を迎えにいくので、開催時間の三十分前に家の前でその車を待っていてほしいこと、などが書いてあった。

 鶴はその手紙の指示通りに、行動し、お茶会の準備を整えた。

 そして、その約束の日が来た。

 その日は八月の十五日だった。


 その十一時三十分ごろ。(お茶会の開催時間はお昼ちょうどだった)

 指定の時間通りに鶴が名門私立秋桜女学園の制服を着て、家の前で迎えの車を待っていると、やがて、少し遠くから一台の黒塗りの高級車の姿が見え始め(それはいわゆるリムジンと呼ばれる車だった)、約束の時間ちょうどに、鶴の家の前にゆっくりと停車した。

 鶴がその車を眺めていると、後部座席のドアが開いて、そこから一人のメイド服姿のとても清楚で綺麗な女性が姿を現した。

「お久しぶりでございます。恩田鶴様。約束通りに、お迎えに上がりました」メイド服姿の女性はそう言って、鶴に頭を下げた。

 その人のことを、鶴は知っていた。

 その人は、清宮桃子という名前の、竹内家に長年、雇われている、菫専属のメイドさんだった。

「こんにちは。桃子さん。わざわざありがとうございます」

 そう言って鶴は礼儀正しく桃子さんにお辞儀をした。

 すると桃子さんは、顔を元の位置に戻した鶴ににっこりと微笑んでくれた。

 桃子さんの姿を見て、あの手紙や、今日のお茶会の主催者が(誰かのいたずらとかではなくて)間違いなく竹内菫本人の主催であることが確定した。

「どうぞ」

 桃子さんが鶴のためにリムジンのドアを開けてくれる。

「ありがとうございます」

 鶴はまた、桃子さんにお礼を言って、それから慌てず、冷静な気持ちで、ひんやりと冷房の効いた広いリムジンの中に乗車した。

 桃子さんがドアを閉じて、そして反対側のドアからリムジンに乗り込むと、リムジンは、すぐに心地よいエンジン音をたてて、恩田家の前から、移動を始めた。

 ……そして、鶴は後戻りができなくなった。

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