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そして五月となり、あれから一度も菫に会えないまま、竹内菫は転校して、恩田鶴の前からいなくなってしまった。
そして教室の中にある、菫の机は本当に空っぽになった。
それから、ずっと沈んだ日々を送っていた鶴に突然、菫から手紙が届いたのは四月の突然のお別れの連絡、菫の五月の転校から、三ヶ月が経過した夏休みに入った八月のことだった。
その手紙には、
恩田鶴様。お久しぶりです。竹内菫です。実は今度、私の実家である竹内のお屋敷で私的なお茶会を開くことになったのですが、もしよかったら鶴にも参加してもらいたいのです。もしご参加くださるのなら、この手紙に同封されている紙の、参加する、のところにまるをつけて、その紙をそのままポストに投函してください。もしご参加くだされないのなら、この手紙はそのまま破棄してもらって、結構です。
では、ご返事をお待ちしています。
あなたの永遠の親友 竹内菫より
と言う文章が書いてあった。
鶴はなんだかこの菫からの手紙を読んで狐にでもつままれたような気持ちになった。
あれだけ連絡を取ろうとしても(あれから電話も何度かしたし、この手紙にもある竹内の御屋敷にも、一度個人的に尋ねに行った)取れなかった菫から手紙が届いた。
それも、名門私立秋桜女学園をやめて転校したことも、三年生になってから、今まで五ヶ月の間、鶴と会っていないことも、まったくそんなことなかったかのように、私的なお茶会を開催するので参加してください、という菫の手紙は、真面目な菫っぽくない印象を受ける手紙だった。
でも、もちろん鶴は手紙に同封されていた紙に書いてある、参加する、のところに赤ペンでまるをつけてすぐにポストにその紙を投函した。
鶴の心臓はなんだか少し、どきどきしていた。
すると、次の次の日、また菫から手紙が届いた。
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