鶴を乗せたリムジンはお昼ちょうどに、竹内家のお屋敷の正門前に到着した。

 正門の前で少し待っていると、門は自動で両側に開いて(鶴が一人で四月ごろ訪ねて来たときには全然開かなかったのに)、リムジンは竹内家のお屋敷の敷地内に移動した。

 そしてそのまま、広大な緑色の森の中のような中庭を通り向けて、本館の前のロータリーを周り、本館入口の手前のところにリムジンはぴたりと止まった。

「着きました」

 と桃子さんが言った。

「はい」鶴は返事をする。

 鶴はリムジンの中で桃子さんが用意してくれた、飲みかけのオレンジジュースを車の中にあるサイドテーブルの上に戻した。

 桃子さんはリムジンを出ると、出発のときのように鶴のためにリムジンのドアを開けてくれた。

「どうも」

 鶴はリムジンの外に出た。

 桃子さんは鶴にお辞儀をして、それからリムジンのドアをそっと、閉めた。 

 鶴と桃子さんが竹内のお屋敷の前に立つと、リムジンは発車して、どこか遠いところに走り去って行ってしまった。

 その走っていくリムジンの後ろ姿を鶴はなんだかぼんやりと眺めてしまった。

「では、参りましょう」

 リムジンの姿が見えなくなるのを確認してから、桃子さんは鶴にそう言った。

「はい」鶴は言った。

 そして鶴は桃子さんの後ろについて、竹内家のお屋敷の中に入って行った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る