13
「小道さん!!」
まりもはとても大きな声でそう叫んだ。
でも、小道さんはためらわなかった。
朝顔と紫陽花のいる小島は、もともと小島ではなくて、川の水位の上昇によって、そう見えるようになった場所のようだった。
小道さんが橋の手すりから飛び降りたときには、もう二人のいる場所である小島は、そのほとんどを大量の川の水に侵食されていて、ドボン!! と言う音がして、小道さんの姿が川の中に落ちて見えなくなるのと同時に、朝顔と紫陽花のいる小島も、川の上から消えて無くなった。
朝顔と紫陽花は、お互いに抱き合うようにして、ぎゅっと目をつぶって、そのまま荒れ狂う川の水の中に飲み込まれて、まりもの目からは見えなくなった。
「朝顔!! 紫陽花!!」
木ノ芽さん夫妻が小道さんのあとを追って、川の中に飛び込もうとした。
「だめです! 危険すぎます!!」
そんな二人のことを警察のかた二人が必死に取り押えるようにして、押しとどめていた。
「本部には連絡してあります。応援がくるまで待つんです!」
「そんなの、待ってられるわけないでしょ!!」
今まで聞いたことのないような怒鳴り声で、木ノ芽さんの奥さんが叫ぶ。
どうやら警察のかた二人はもう朝顔と紫陽花、そして二人を助けに川に飛び込んだ小道さんは助からないものとして、考えているようだった。
街を守る警察官として、『これ以上の犠牲を出さないこと』を第一に考えているようにまりもには思えた。
それは、とても正しいことなのかもしれない。
なぜかまりもは冷静にそんなことを、みんなの様子を一人、少し離れた場所から、ぼんやりと見ながら考えていた。
でも、これ以上の犠牲って、いったいなんだろう?
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