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まりもが木ノ芽さんの車に乗せてもらって、川の横にある土手の上を走る道路まで来たとき、その大きな川の風景を見ると、普段は大人しい川は思っていたよりも、とても大きく荒れていた。
雨の勢いは増すばかりで、周囲に人の気配はなかった。
川には大きな橋がかかっていた。
その橋の上のところに、誰か人の姿が見えた。
それはどうやら、小道さんのようだった。
「あ、あの! あそこに秋葉さんがいます!」まりもは言った。
「どこ?」木ノ芽さんの奥さんが言う。
「あの、橋のところです」
まりもは橋を指差した。
「わかった」
木ノ芽さんの旦那さんがそう言って、車を橋のところまで走らせた。
木ノ芽さんの車の後ろには、警察のかたが乗っているパトカーが一台、ついて移動していた。
その二台の車が橋の入り口の道路のところまで来たとき、小道さんは橋の真ん中あたりから、身を乗り出すようにして、強い風と雨の降り注ぐ中で、荒れ狂う大きな川の様子をじっと、食い入るように見つめていた。
そんな小道さんの姿を見て、まりもはすごく嫌な予感がした。
そしてその予感は、すぐに現実のものになった。
まりもが木ノ芽さん夫妻と警察のかた二人と一緒に、小道さんのいるところの手前の場所で、車を降りてから、小道さんのところまで橋の歩道を走って移動しているとき、大きな川の中にある小島のような場所に、見覚えのある二人の子供がいた。それは間違いなく朝顔と紫陽花だった。
その二人の姿を見て、木ノ芽さん夫妻は、とても大きな声をあげた。
それからすぐに小道さんが、橋の手すりのところに足をかけて、その上によじ登り始めた。
そんな小道さんの行動を見て、まりもはすぐに、小道さんがなにをしようとしているのかを察した。
小道さんは朝顔と紫陽花を助けるために、荒れ狂う川の中に飛び込むつもりのようだった。
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