第2話
怖くなんてなかったわ。
だってその人の話はとてもとても面白かったのだもの。
色々なことを話してくれた。
月の裏側で眠り続けるクマの話。
太陽に近づこうとして結局諦めてしまったシマウマの話。
星を渡り歩いているうさぎの兄弟の話。
雨と共にワルツを踊ることが好きなチーターの話。
どれもこれもとても不思議でとても面白かった。
だってこんなに世界が素敵に見えたのは初めての事だったんだもの。
私はその男に訊ねたわ。
「ねぇ?どうしてそんなに不思議で楽しいお話を沢山知っているの?」
男はなんの迷いもなく答えてくれた。
「なんでかって?それは僕がそれら全てをこの目で見てきたからさ。僕はこの世界を旅する旅人だ。Mademoiselle。キミにも見せてあげよう」
そう言うと男は持っていた杖を振り上げたわ。
その瞬間私達二人はふわりと宙に浮かび上がったの!
びっくりして声が出なかったわ。
でも余りにも素敵な感覚に、私も段々楽しくなってきてしまったのね。
次第に空中で回ったりダンスを踊るようにステップを踏んでみたり。
色々なことをしてみたわ。
まるで今まで私を地球という牢獄に縛り付けていた枷が無くなったかのような、そんな素敵な気分になった。
そんな私を見て男は微笑んだ。
そうしてもう一度私に同じ事を言ったの。
「さぁ、Mademoiselle。僕と夜空の散歩はいかがかな?」
とても綺麗で、でもとても不気味な三日月がその男の口元に浮かんでいた。
私の頭の上にあるお月様にそっくりだったわ。
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