第7話違和感(1/3)
「今後?」
真面目な表情を作ったラポは、俺の目をまっすぐに見た。
「…突拍子もないことを聞くがよ。この世界、どう思う?」
「は?」
「真面目な話だ。で、どうよ」
「一言でいうなら歪。この国で生活しているだけでもそこかしこに違和感を覚えます」
この国はおかしい。どうにも歪で、特にこの赤の地区ではそれが顕著だ。
文化はそれなりに成熟しているにもかかわらず、文明の発展を意図的に抑制されているように思える。
この世界に来た当初は、魔法の発達によって科学による恩恵を拒絶しているものだとばかり思っていたが、どうやらそういうわけでもないらしい。
「俺もそう思う。この世界に来た…来たって言い方で正しいかわからんが、そういうことにしとこう。
んで、俺達の前いた世界じゃあ錬金術っつう分岐点を科学に折れた。じゃあこの世界は?魔法に?違うよな。多分どっちもだ。どっちも受け入れてる。そうじゃなけりゃおかしい」
町の雑貨店にでも行けば、滑らかな手触りをしたほぼ均一な品質の洋紙が安価かつ大量に販売されている。まるで工場で大量生産された規格品みたいに。
適当な路地を選んで入った先にある民家の窓には、透明度の高いガラスが使われており、他の多くの場所でも同じことが言える。
他にも完璧な上下水道、個人宅に設置された水洗トイレに風呂。
どうにも四つある地区の中で最底辺らしいこの赤の地区でさえ、現代っ子の俺達が不自由なく暮らせるだけの環境がある。
「確かに。生活していてどちらの恩恵も感じます。どっちも中途半端な感じはしますけど。
例えば、機械らしい機械はないし近代兵器なんぞ影も形もありゃしません。飛び道具はボウガンがせいぜいで爆弾なんかは採掘用の物すらなし。少なくとも、調べられる範囲じゃね。
それと、魔法技術ってのもSFに片足突っ込んだようなぶっ飛んだものじゃないらしいですよ。この魔具を見るととても信じられませんが」
堅苦しい雰囲気に疲れてきた俺は、手の中で弄んでいた赤いカードをラポに向かって飛ばす。
やつは格好つけて人差し指と中指で受け止めようとしたが、あえなく失敗し、額で受け止めた。
「よく調べてやがんなぁ。
俺はな、どうにもその半端さが腑に落ちねぇ。
それで、俺はこう考えた。どっかの誰かがそうあることを望んでこうなってる。この世界の
もちろん、こいつは俺の主観とバリバリの陰謀論を効かせた意見だぜ?なんとなくそう思うっていう根拠すらねぇ妄想だ」
「神だとか魔王だとかそういうふざけた存在がいて操っているとでも?ちょうど、俺らを操り人形みたいにしているように?」
「知らん。出鱈目こいただけだ。この一人称のロールプレイングゲームみてぇな状況で俺もそれなりに参ってるらしい。
どっちにしろこの世界が望まれているのは王道を外さないことなんだろうよ。
剣士に銃ぶっ放して殺すだとか。魔法で動く巨大人型ロボットが殴り合うだとか。そんなことになりうる要素がごっそり抜け落ちてやがる」
ラポは世界と大きなことを言うが、この町から大して出もしないのにそんな風に断定するのはラポという肉体がもつ記憶が補完しているからなのだろう。俺も時々、トロイの持つ情報が推測やなんとなくといういい加減なものを、正しいと断定するのを感じる。
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