第6話 エピローグ、その1――桃井杏
それから1週間後、わたしの症状は治まった。
先生の言う通り、できるだけトイレに行かないことを心がけた結果だ。つまり、あのときの検査データが示していた通り、わたしは病気ではなかったということなのだろう。けれど、だからといって、3週間前から始まったあの症状がすべて”気のせい”だったのかどうかは分からない。それはあの先生にも分からない。症状が出たちょうどその時、つまり3週間前には、なんの検査もしていないからだ。
ともあれ、わたしは再び元気な体を取り戻した。
そして今日、あるマンガ家とともに、新たな医療マンガを一本起こすことになった。来週から下調べと取材が始まる。
わたしは、今回、あの先生と話すことで、わたしは医者と患者の間に横たわるマリアナ海溝をはっきりと感じ取ることができた。決して埋まらない深い深い溝。その状況はこれから先も変わることがないだろう。
けれど。
(たとえ溝は埋められなくても、橋を架けることくらいならできるかもしれない)
わたしはそう思った。
マンガというメディアを通じて、シンプルに、かつ分かりやすく、けれど専門的に。
それが次のわたしの仕事であり、目標だ。
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