だれも永遠には生きない

 きみはもう

 死を忘れたのかな?

 これほど死体があふれても

 きみには見えなくなったのかな?

 だれも永遠には生きない

 人を好きになるたび

 その人が死ぬことを思い出す

 死は好きではない

 だから、人も好きではなかった

 人は死ぬから

 生まれたことも好きではなかった

 いつか必ず死ぬから

 それでも好きになった

 優しかったとき

 楽しかったとき

 風が静かだったとき

 音が綺麗だったとき

 永遠に好きではなかった

 だれも永遠には生きない

 人が好きではなかった

 生まれたくなかった

 死ぬくらいなら生まれたくなかった

 人が死ぬ

 あの人も死ぬ、いつか死ぬ

 生まれたくなかった

 好きになりたくなかった

 死んでほしくなかった

 死にたくなかった

 生きたくなかった

 きみは

 きみはどこにいるのだろう

 わたしは

 わたしはだれに話しかけているのだろう

 だれに呟いているのだろう

 だれに書いているのだろう

 わたしにはだれもいないのに

 もうなにも聞こえない

 隣の人の息遣いも

 地べたで止まりかけている鼓動も

 だれも永遠には生きない

 生まれたくない人間が永遠に生まれつづける痛み

 死を味わうことなく死にたかった

 わたしは好きではなかった

 わたしに映るなにもかもが

 死をささやかな理由として

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