冬の足音

 冬の足音

 窓が曇れば

 もうすぐやってくる終わりが恋しい

 息は今年も

 白いまま


 動かなくなった人の口許に

 鏡を近づけて

 曇るかどうか確かめる

 そんなかたちの死亡判定

 息のない死者

 白くならない


 鏡は自分を

 見つめるためにある

 死者が鏡を見たら

 なにが映るのか


 魂が凍えないうちに

 寒さに揺らぐ感情をとらえよう

 冬にふたりで歩いたら

 遠のく気持ちも薄まるか

 季節の手紙が

 宛先不明で送り返されて

 だれにも文面を明かさないまま

 何日も宙を舞っている

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