なんぢの隣の死

 なぜだかぼくは自殺が気になって

 夜、ひとり

 それをしようと

 自分しか知らない決断をするその瞬間のこころの寂しさが

 他人事とは思えなくて

 そして自殺というのは

 他人が他人であり

 その隔たりは絶対に埋まらないという残酷な事実を

 だれにも届かなかった痛みという仮定された内的経験の痕跡として

 いつも遅れて知らしめて

 そしてまた

 忘れられる

 おのれの如く、なんぢの隣を愛すべし

 それをやり遂げられる人間は

 ひとりとしていないと

 日々の風化が教えるように

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