もの

 歩くたびに消えていく

 もの

 名づけという馴致じゅんちこば

 もの


 そのもの

 ゆらぎ

 もののふるえ

 もの

 胸よりも奥まった場所

 背中よりも前の秘所ひしょ

 そこにあるもの

 げんぜんとふるえるなにか

 もの


 時間に削られるぼくらのまいにち

 すすむたびにゆがむ道

 壁を走り抜ける泡のような

 もの

 老いに許された節目ふしめ

 生存の島嶼とうしょ

 頭ひとつぶん過去にずれた

 もの

 寂しき遅延ちえんの最果てにあるもの

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る