裂け目

 言葉の流れは感情の流れ

 ではない

 甚だしく乖離する

 そのすれ違いに

 余白としての人間をとらえられるなら

 言葉は奴隷であることをやめるだろう

 鎖につながれた笑顔を信用しなくてもいい

 あなたが感じた疑惑は正しい

 言葉の表層にきざした裂け目

 それこそが他者の温度だと

 だれにもこころを開かなかったあなたなら

 わかるだろう

 あなたの伝わらなかったすべてのように

 その裂け目が消えてしまうのを

 せめて忘れずに見守ろう

 あなたの伝わらなかったすべて

 あなたの裂け目とその痛み

 思い出すことは罪ではないから

 あなたの過去は救われていい

 あなたは自分を救ってもいい

 あなた自身にしかわからない方法で

 ためらわず

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る