詩を書きたくない夜がある

 詩を書きたくない夜がある

 詩を書きたいようなうずきがある

 またこの世に

 不要な言葉を逃がしてしまった

 どこかで野垂れ死ぬ無愛想な言葉

 道ばたにある死体を見て

 あれは自分の言葉だと

 確認するのが怖かった

 書かない正当な理由だった

 詩を書きたくない夜がある

 詩を書きたいような疼きがある

 おまえはたしかに詩人だと

 許可をもらったわけではない

 だからこれもまた詩ではない

 捺印をもらった詩ではない

 駆除対象の不出来な言葉

 処分を待っている犬猫のような言葉

 詩を書きたくない夜がある

 詩を書いていい資格はない

 詩を書いていい自由はない

 詩を書いていい理由はない

 詩を書きたくない夜の疼き

 また言葉

 許されない言葉

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