ヴォネガット

 ヴォネガット

 初めて信頼できた外国の書き手

 アメリカは

 殺戮が大好きな病人大国だと

 怒りと諦念をひたすらに書きなぐった

 気難しい義人

 優しい皮肉家

 死と自殺と墓をくりかえし描いた人


 この国に

 ヴォネガットはいない

 ヴォネガットが

 本当に義人だったかどうか

 優しかったかどうか

 知りようもないが

 この国に

 ヴォネガットはいない

 あたりまえだ

 アメリカにも

 もうヴォネガットはいない

 あたりまえだ

 人はひとりきりだ

 死んだらそれまでだ

 ヴォネガットが

 くりかえし言っていたのは

 そういうことだ

 そういうものだ

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