影の倫理

 影には影の倫理がある

 光さす街道

 群れなす幼童

 見守る母堂

 なんとはなしに明るい広小路

 その表通りから弾かれた

 路地裏に生息する影は

 低い暗がりから見た正義しか信じない

 踏みにじる大義を信じない

 陽光のみの笑顔を信じない

 居場所を奪われたことのある影には

 明るさの残虐性が耐えられないからだ

 影には影の倫理がある

 暗い面持ちで

 強いられた倫理を白眼視しながら

 薄闇に呑まれる細くて弱くて小さなものを

 忘れないための倫理を打ち立てる

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