あまねき老人

 劣っていく

 一日前の自分より

 劣っていく

 小指はしなやかさを失い

 歩くリズムは微細に乱れ

 声は少しだけ低くなる

 劣っていく

 ひからびる成長速度で

 劣っていく

 最後の日

 しぼんだ柿みたいな

 劣ることを極めた肉体

 皺に残された精神

 それでも

 死を演じきるという点において

 子どものように若やいだ老人

 初源に近づいた幼い老人

 よわいを無効化した中性の老人

 いくつになって死のうとも

 死ぬときのかおはみんな老人

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る