密葬

 そうだった

 そういえば

 もともとだれに読まれるかもわからず

 あてもなく書いていたのだった

 いつのまにか

 親切な人が欠かさず読んでくれていたから

 甘えてしまったような気がする

 そうだった

 もとはといえば

 自分以外がとうてい読むとは思えずに

 だれにも見せない遺書のように

 秘密めかして

 だれにも会わない湖に

 言葉を投げて

 微かな波紋も期待せず

 想いを沈めていたんだ

 そうだった

 そうだった

 もとはといえば

 だれにも知られない想いを

 だれにも読まれない言葉で

 密葬しているだけだったんだ

 十二のみぎりにひとりで埋めた

 自分の死体と同じように

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