いない人へ捧げて焼いた

 そこにいないことが

 そこにいることよりも

 存在を主張するときがある

 いないんだ

 あの人はいないんだ

 いつもここで見かけていたあの人は

 もう違うところへ行ってしまったんだ

 あの人はまだこの世にいたとしても

 ぼくの人生からはいなくなったんだ

 そしてぼくの思考の大半は

 いない人のために費やされている

 こころの領地のほとんどを

 あの人に捧げて焼いてしまった

 焼け野原の片隅にほんの少しだけ残った二畳ほどの草原くさはら

 いまのぼくの生活圏だ

 命の芽吹く可能性のすべてだ

 この場所もそろそろ

 焼いてしまおうかと最近は考えている

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