ハーブティー

 初恋の死体が客間に転がっている

 急の来客により

 とりあえず浴室に放り込む

 お慕い申し上げている相手とハーブティーを楽しむ午後のひととき

 なんだかこのお茶、血の味がしますね

 なぶるように笑っている来客の一言

 気のせいですよ、と答えながらカップを持つ手が震える

 浴室の方からなにかが倒れるようなけたたましい物音

 オットセイが寝返りを打ったような、いまの音はなんでしょう

 気遣わしげに笑っている来客の一言

 猫でも迷いこんだかな、とヤケクソでしらを切りながら窓の外を眺める

 べとついた足音が客間に迫る

 振り返ると

 初恋の死体が扉を開けて入ってきた

 惨たらしくも美しく死んでいる、この方はどなたでしょう

 笑いながら怒っているような来客の一言

 もういいや、きみも座りなよ、と諦めて初恋の死体にお茶を用意する

 そのかわりハーブティーを飲み終わったら

 ちゃんとまた死んでくださいよ

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