アリスではない投身者たち
屋上から飛び降りた人間が
九階、八階、七階、六階……
だんだん地面に近づいていく
その生涯最期の墜落の
どんな想いが去来するのか
ぼくはそれが知りたい
アリスはウサギのあとを追って
穴に飛びこみ
深い井戸をゆっくりと落ちていった
夢見がちな女の子が
引きのばされた墜落の最中になにを思うのか
ルイス・キャロルはひとつの解答を示した
でもアリスではない
踏みにじられた成人女性が 歪められた成人男性が いじめ抜かれた未成年が 忘れ去られた御老人が 疎外されつくした浮浪者が
墜落の最中になにを想うのか
ぼくの知りたいそのことを
キャロルは教えてくれなかった
屋上から飛び降りた人間が
五階、四階、三階、二階……
だんだん地面に近づいていく
もしもこの詩を書いた者にも
飛び降りる機会がおとずれたとしたら
早口で詩をまくし立てながら
言葉を使いつくして死にたい
どうせその時に想うことなど
大したことではないだろうから
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます