手話詩をみて

 詩が手話によって

 伝えられるのを初めて見た

 難解としか思えない現代詩が

 とても雄弁な身ぶりを引き出して

 空気を震わせていた


 盲目の詩人といえば

 ホメロスやミルトンが高名だが

 聾者ろうしゃの詩人のことは

 寡聞かぶんにして知らなかった

 音のない世界

 静寂の海原うなばらに響きわたる

 音のない言葉の音楽


 難解な詩を立て続けにまくし立てた詩人が

 最後にひとつだけと

 ついでのように手短てみじか

 透きとおった恋のうたを

 はにかんだ身ぶりで朗読した

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