廻廊を影と

 薄暗い廻廊かいろうがもう何年も続いている

 陽のさしこむ大道を

 かつては自分も歩いていたということが

 にわかには信じがたくなっている

 見たまえ

 きみの足元の影が

 取り囲む闇と結託して

 きみが続けてきた唯一の身振りすら剥ぎ取ろうとしている


 影のない孤独

 他人から離れて歩いてきたきみが

 ついにその最後の伴侶はんりょまで失ったとき

 きみの歩行はただひとりのものだ

 影のない歩行はきみ自身のものだ


 宙に浮かんだきみの遊歩ゆうほ

 廻廊を経めぐるそぞろ歩き

 たどり着く先がどこかはわからないが

 きみの歩いた軌跡は

 影が後を追うことをめたいまでも

 うつな風が刻み込んでいる

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