9月3日 -黒い日記-

昨日手についた血の匂いが取れない。


少女の顔にかかっていた少量の血は、少女が眠っている間に布で拭きとった。


これでは今日の配給を受け取りに行く時に不便であると感じ、私は少女に配給の紙を渡し取りに行かせることにした。


しかし少女の着ている服は所々破れ、外を出歩くには少々官能的なものを感じさせる。


家に保管してあった女物の服を少女に与えると、少女はとても喜んでいた。


私は少女に「寄り道をすると怖い目に遭うよ」と忠告をして、外へと出した。


私は出来るだけ少女を傷付けたくは無いと思う。


これは親心なのであろうか。


昨日手に入れた煙草を一本吸っていると、少女は配給食を持って帰ってきた。


私の事をお姉様と呼ぶ少女の頭を撫で、配給食を風通しの良い所に置くよう言った。


少女は庭の縁側に配給食を置き、私は日記を記す。


私は時々物忘れが酷い。


午前中に起こった出来事の詳細を夜には忘れている時だってある。


なので、この日記は午前と午後の二回に分け書こうと思う。


私が日記を書いていると、少女は日記に興味を示したようであった。


少女は何かを少し考えるように、じっと日記を見つめ、「私も書いてみたいです」と言った。


偶然にも赤色の日記帳が余っていた事と、少女がどのような日記を書くのかが気になった私は了承し、少女に日記と鉛筆を手渡した。


私は街に出て、倒壊した建物の木片を片付ける手伝いをした。


私に力仕事はあまり向いていないように感じるが、頼まれると断れない性分であるから仕方がない。


家に帰り、少女の手と足に付いていたゴミを取る。


少女は私に礼を言い、配給食を取りに縁側へ行った。


薄明かりの中、二人分の食事を分け、ゆっくりと食べた。


食後、私は少女に水浴びをさせた。


月夜に照らされ、水を滴らせる少女の身体はとても美しかった。


私も少女のようになりたいと思った。

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