柊
こえがなう
9月2日 -黒い日記-
今日、この国は崩れ去った。
度重なる空襲により民家は焼け落ち、人々の死体は山のように重なり合う。
かの国の軍人は女を犯し、乞食のように群がる子供に車上から菓子を投げ我々を笑い飛ばす。
配給を貰いに街へ出た私は、茶色の髪をした男に連れ去られそうになっている少女を見た。
歳は十一ほどであろう少女。
彼女の行き着く先は容易に想像が出来た。
配給を知らせるベルが鳴り響く。
少女は隠し持っていた手のひらに収まるほどの小さな竹槍で男の首を刺し、殺した。
私の世界の何かが弾けた。
私は少女の元へ行き、少し血を浴びた顔面を数発殴る。
鼻から血を流し、意識が朦朧としている少女を、私は連れ去った。
家に着き、少女の身体を麻紐で縛る。
意識がはっきりとしてきた少女に、私は謝罪をした。
少女は、私が殴った理由について理解をしたようであった。
少女はこの家が気に入ったらしい。
少女は孤児であった。
少女は私を姉と呼んだ。
私は少女を妹とした。
少女を縛っていた紐を解き、私は今日の配給食を分け与える。
二日ぶりの食事に少女は満足したようで、荒れた畳の上でそのまま眠りについている。
私はこの少女と共に生きてみようと思う。
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