7.バージョンアップ
最強の"レミエル"とはいえ、無補給で連戦はできない。
ということで、本来なら"王都シムラクタ"に帰還する予定を変更し、近隣の街である"オーツィウム"に寄港した。
ここで怪我人を降ろし、代わりとして各種補給品を積載した。アルバートもここで一旦離脱となった。
「急いでかき集めたけど、小粒の魔核がほとんどなの。悪いわね……。」
ここは魔導船バジスの中、俺に宛がわれている船室の中だ。
目の前にはうず高く積まれた魔核の山、俺の身長程の高さがある。よく短時間でこれだけ集められたものだ。
「いや、充分過ぎるさ。俺が利用するのに大粒小粒は関係ないからな。」
マグナや戦技兵器に使用する魔核は、大きなもの程良いと言われているらしい。
魔核を加工して製品を作る場合、採取元の異なる魔核を複数寄せ集めると、性質や状態の違いで同調を取るのが非常に困難らしい。ならばということで、大きな魔核1つで製品を作るのが良いということになる。必然、大きな魔核の需要が高まり、値上がりするわけだ。
ちなみに、マグナ程の大きなものはどうやっても魔核1つで作れない。複数の魔核を組み合わせた結果が、あの恐ろしく乱雑な操作系統なのだろう。
俺の場合、
「でもいいのか? 明らかに報酬分以上はありそうだ。」
俺の言葉にエリーゼは首を振る。
「言ったでしょ? 武器は兵団から支給するって。」
つまり、これが俺たちに支給される"武器"ってことか。
「わかった。ありがたく受領する。」
エリーゼはにっこりと頷く。
「もう出航だから、私はブリッジに上がるわ。1時間程度で最前線の"ヴァルデ砦"に到着するから、急いでね。」
エリーゼは船室の扉に手を掛けつつ俺に告げる。
「まかせろ。」
一つ頷き、エリーゼは船室を出る。
俺は魔核の山に手を置く。
目の前の山が蠕動し、蠢く粘液状となり部屋全体へ広がる。
「おおー。」
レインが微妙に無感情な歓声を挙げる。
「いつかの地下室みたいになったな。」
さて、それでは始めるか。
あの巨人の強固な外殻を突破して、有効打を与えられる武器が必要だ。
今のところ最大威力の武器は俺の
「……レインは何か希望はある?」
足元の蠢く黒い粘性体を眺めていたレインが、ハッと気が付いたように俺を見る。
「……ん……。どかっと? ばきっと?」
「……。」
レインは素振りをするような恰好をする。
そういえば、レインの
「そうか、単発式か。」
よし、
俺は
デザイン画面に
既存ファイルからレバーアクションの連発式ライフルを呼び出して、構造を一部コピー、
自動調整を交えつつ微調整を……。
【構築しますか?(YES/NO)】
Yesを選択っと。
【EQコンストラクタ 起動】
【starting construction system...】
【mu phage developers tools startup】
【constructing...】
【completed】
黒い粘性体が渦巻き立ち昇り、
「チーン♪」
20分足らずで連発式の
「さすが。AIによる変更作業補助があるお陰であっという間だな。」
銃を手に持ち、歪みなどが無いか確認。特に問題はないようだ。
「レイン持ってみて。」
「おおー。」
先ほどの歓声よりも幾分感情の籠った歓声だ。
「よし、俺用にも同じ銃を作るか。」
【EQコンストラクタ】で
「取り回しも課題かな……。」
レインは
そういえば、以前レインの身体情報を見た時に、背中に拡張ポートがあると記載されていた気がする。
「レイン、少し服を肌蹴て背中を──、」
ボチャン
粘性体の中に銃が沈む。
新しい銃をいじっていたレインは、俺の言葉で銃を落した。
レインは驚きの表情になったあと、少々の恥じらいを見せ、もじもじしている。
「コースケ、こんなときに求めてくるなんて……。戦いの後は欲情するという話は事実……?」
「……。」
わかって言ってるだろ……。
レインの背中に接続できるバックパックを設計、
よし、これで構築。
俺の操作に呼応して、粘性体が新たな構築物の生成を開始する。
「あとは、俺のアーマーにもガンアームで
目的地に到着するまで、俺はひたすらに装備の構築と調整を行った。
緩衝地帯。
俺が住む"メディオ王国"の東には"神聖レジオカント帝国"があり、両国の間には緩衝地帯が広がっている。王国と帝国は確かに仲が悪い。だが、緩衝地帯が必要なほど頻繁に衝突を行っているわけではない。
では、なぜどちらの国にも属すことのない地帯が存在するのか。それはこの場所の地理が関係している。
王国も帝国も、山岳と海に囲まれている。山岳にはモンスターが多数生息しており、通称"魔界"と呼ばれている。海も海洋性モンスターが多量に存在するため、ほぼ魔界と同様の扱いだ。人は山岳と海の間にある少ない丘陵地に生きている。
緩衝地帯となっている地域は、山岳が海近くまで張り出している。そのため、常に少なくない数のモンスターが闊歩している。人が在住できる場所ではないため、王国も帝国も実効支配という状況が取れず、自国領と明言していない。
孝介としての感覚から言わせてもらえば、モンスターに囲まれて細々と生きている状況にも関わらず、人間同士で領土争いをする場合ではないと思うのだが、そこは限られた生存領域だからこそ、ということらしい。
人間なんて、どんな世界でも同じようなものらしい……。
甲板の縁から船外を眺める。明確に境界線があるわけではないが、この先が緩衝地帯だ。そして船体の真下、そこには堅牢な城壁に囲まれた城塞があった。
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スペックシート:レイン、ルクト・コープ(識名 孝介)
氏名:レイン(本名 ,%&#|$'-レイ^n)
性別:女
年齢:16?
タイプ:遠距離戦
装備:
・PEバッテリー
高性能なエネルギー蓄積装置。装置内部に陽電子化した状態でエネルギーを保持するため、小型で超高容量。
無線給電によりエネルギー量は自然回復する。
・全身義体
チタン合金による骨格、強化繊維ベースの強靭な人工皮膚によって構築されている。
【
動作には人工筋繊維と
・
衝撃発生器を銃身に多数取り付けた多段式加速銃、通称ムカデ銃
口径20mmにもなる大型銃。全長は140cm程度、銃身は70cm。装填数 10発
銃身内に多数の衝撃発生器が配置されており、連続衝撃による超加速で弾丸を打ち出す。
単発式構造からレバーアクションの連発式に改造されている。
通常はこの銃を撃てるほどの
・オープレシーインジェンス
レイン専用、通常の
レインの過剰な
・メタルヘルム
孝介が【EQコンストラクタ】で構築した開閉式フルフェイスヘルメット。
・リキッドドレスアーマー
孝介が【EQコンストラクタ】で構築した長袖・ロングスカート形状のワンピースアーマー。全身黒色。
ポリアミド素材にダイラタント流体を合わせた素材で作られており、通常時は柔らかいが、速いせん断刺激(衝撃)
には強い抵抗力を発揮する。
両足のフィールド発生器の邪魔にならないようにスカート形状としてある。
残念ながらスカートの中はショートパンツをはいている。
・バックパックガンアーム
可動式銃架を2基搭載したバックパック。レインの義体背中には装備増設用のアタッチメントがあり、そこへ取り付けて
使用する。(ドレスアーマーの背中はバックパックを邪魔しないように大きく開けてある。)
破砕槌をセットするためのクランプアームも搭載されており、武器交換をし易くなっている。
増加した重量を補助するためにフィールド発生器を1基内蔵している。
諸元:
・PEバッテリー
容量:5800kWh、最大出力:800kW、最大蓄積能力:300kW
・フィールド発生器×2(両足)+バックパック
最大出力:65kW(推力:1500N)(3基合計)
技能:
・飛行
氏名:ルクト・コープ(
性別:男
年齢:15
タイプ:中近距離戦
装備:
・PEバッテリー
高性能なエネルギー蓄積装置。装置内部に陽電子化した状態でエネルギーを保持するため、小型で超高容量。
無線給電によりエネルギー量は自然回復する。
・義手義足
チタン合金による骨格、人工筋繊維による作動、強化繊維ベースの強靭な人工皮膚によって構築されている。
【
・圧縮格納μファージ
機能を停止し、体積圧縮されたμファージ。体内や義手義足の余剰スペースに格納保存されている。
そのままでは使用できない。使用する場合には解凍展開、機能の再起動を行う必要がある。
展開すると黒い粘液体で広がる。展開状態であれば装備の設計変更、再構築など、様々な用途に使用可能。
・パワードアーマー2
チタン合金外骨格、内部に人工筋繊維によるパワーアシストシステムを搭載した全身鎧。
頭部もフルフェイスでカバーするため、外からは顔が見えない(中からは各種センサで外の様子がわかる)
背部に追加装備搭載用のガンアームが増設されている。
・
衝撃発生器を銃身に多数取り付けた多段式加速銃、通称ムカデ銃
口径20mmにもなる大型銃。全長は140cm程度、銃身は70cm。装填数 10発
単発式構造からレバーアクションの連発式に改造されている。
レインの銃を元にコピー生成した武器。パワードアーマー背部のガンアームに接合されてる。
・麻の上下
住民がよく着ている一般的な服装。
諸元:
・PEバッテリー
容量:3000kWh、最大出力:500kW、最大蓄積能力:300kW
・フィールド発生器×4(両手両足の義手)
最大出力:72kW(推力:1600N)(4基合計)
技能:
・飛行
・
ウィラクトによる衝撃波。近距離用であるため、射程は数十cm。
・
ウィラクトによる衝撃波。高収束による遠距離用。射程は数m。
スラストタイプは距離で威力が減衰するため、攻撃力は
・
連射式の
・
フィールド発生器の圧縮器内圧を限界まで引き上げ、威力を増した
収束することができないため、接近して放つ必要がある。粒子圧縮器が過重に耐えられず
1回で破損する。威力は
・
ディール粒子かく乱により思考混乱。一時的な全身麻痺を起こす
相手の頭部付近に直接触れる必要がある。
・
思念波を球状に展開し、防御用の障壁を生成する。物理的攻撃や思念力攻撃を防ぐことができる。
・
各種リミッターの解除(飛行機能、パワーアシスト機能など)と、思考加速を用いることで、稼働速度域を数段上げることができる。
使用時間はシステム上の制限は存在しないが、PEバッテリーの消耗や生体部分への負担を考えると3分程度が最適。
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